新規CETP阻害薬は血圧を上昇させない?

提供元:ケアネット

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公開日:2007/12/20

 

コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害薬はHDLを増加させるため、冠動脈イベント抑制作用が期待されていたが、torcetrapibを用いた大規模試験ILLUMINATEでは総死亡と心血管イベントリスクをプラセボに比べ有意に増加させていた。このtorcetrapib群におけるイベント増加の一因として血圧の上昇を指摘する声があったが、新規CETP阻害薬anacetrapibには血圧に対する悪影響はないかもしれない。Merck Research Laboratories(アメリカ)のRajesh Krishna氏らがLancet誌12月8日号で報告した。

健常者に低脂肪食下で血圧評価




本研究では自由行動下血圧(ABP)を用いて血圧への影響を検討した。45~75歳の健常者22名をanacetrapib 150mg/日群とプラセボ群に11例ずつ割り付け、服用開始10日後の24時間ABPを測定した。その後、最低14日間の無服薬期間経過後、プラセボ群とanacetrapib群を入れ替え、再び服用開始10日後に24時間ABPを測定した。試験期間中は低脂肪食が供された(理由不詳)。

まず血圧日内変動だが、anacetrapib群とプラセボ群に大きな差はなかった。また24時間血圧の最小二乗平均値で比較すると、プラセボ群に比べanacetrapib群では0.60/0.47mmHgの上昇を認めたのみだった(有意差なし)。

HDL-Cは用量依存性で有意に増加




本論文にはもう1つ研究が収められている。こちらは脂質代謝異常例を対象とした用量発見試験であり、50例をプラセボ群とanacetrapib 10~300mg/日の4群にそれぞれ10例ずつ無作為割り付けた。

服用開始28日後、anacetrapib群ではいずれもプラセボ群に比べHDLコレステロール(HDL-C)が有意に増加していた。HDL-C増加作用は用量依存性であり、300mg/日群で最も強力となっていた。

torcetrapibとの違いは?




本論文では脂質代謝異常例における血圧データは示されず、またtorcetrapibによる血圧上昇の一因とされた「血中アルドステロンの増加」の有無を見ていないのも残念だ。

考察においてKrishna氏らはtorcetrapibとの違いを強調しているが、torcetrapibも162例を8週間追跡した第II相試験では明らかな血圧上昇は認められていない。

さらなるデータを待ちたい。

(宇津貴史:医学レポーター)