ドイツがん学会のDirk Eyding氏らは、「Reboxetineは、概して無効であり、場合によっては有害となり得る抗うつ薬である。公表されているエビデンスは、出版バイアスがかかったものである」ことをBMJ誌2010年10月16日号(オンライン版2010年10月12日号)で発表した。未発表論文を含めたプラセボまたは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)との対照試験データの、システマティックレビューとメタ解析の結果を踏まえたもので、「本結果は、過去の薬理学的データも含め臨床治験の結果は、公表を義務化する必要性があることを強調するものだ」と結論している。
米国で承認されなかったreboxetineの出版バイアスの影響を調査
Eyding氏らは、プラセボまたはSSRIとの比較で、うつ病の急性治療におけるreboxetineの有効性および有害事象を評価する目的で、未発表を含めた試験論文のシステマティックレビューとメタ解析を行った。reboxetineは、1997年に欧州各国で抗うつ薬として上市されたが、米国では有効性についての疑念から承認されていない。研究グループは、抗うつ薬研究は特に出版バイアスの影響があることを踏まえ、reboxetineにおける出版バイアス影響の測定を行った。
解析は、2009年2月までの発表試験論文をMedline、Embase、PsycINFO、BIOSIS、Cochrane Libraryで検索する一方、ファイザー社(ドイツ)から未発表試験データも入手した。
適格としたのは、大うつ病の成人へ6週間以上の急性期治療が行われた、プラセボもしくはSSRIとの比較による二重盲検無作為化試験。主要評価項目は、有効性アウトカムとして、寛解率と反応率、および有害アウトカムとして、一つ以上の有害事象または有害事象による服薬中止とした。出版バイアスの測定は、発表試験と未発表試験との比較で行われた。
対プラセボ115%、対SSRIで23%有効性が過大評価
解析適格となったのは13試験、被験者4,098例だった。そのうち被験者74%(3,033/4,098)分のデータは未公表のものだった。
結果、reboxetineとプラセボとの比較において、寛解率に有意な差は認められなかった(オッズ比:1.17、95%信頼区間:0.91~1.51、P=0.216)。
反応率については8試験で検討されていたが、メタ解析では不均一性が大きかった(I2=67.3%)が、少数の入院患者を除いた感度分析の結果、reboxetine投与を受けた患者群とプラセボ群との反応率に有意差は認められないことが示された(オッズ比:1.24、95%信頼区間:0.98~1.56、P=0.071、I2=42.1%)。
SSRI〔fluoxetine、パロキセチン(同:パキシル)とcitalopram〕との比較では、reboxetineの方が、寛解率(オッズ比:0.80、95%信頼区間:0.67~0.96、P=0.015)、反応率(同:0.80、0.67~0.95、P=0.01)ともに劣性だった。
有害アウトカムに関しては、reboxetineはプラセボと比べ両指標項目とも劣性で(P<0.001)、fluoxetineとの比較では有害事象による服薬中止について劣性だった(オッズ比:1.79、95%信頼区間:1.06~3.05、P=0.031)。
また発表論文では、プラセボとの比較によるreboxetineの有効性について最大115%、SSRIとの比較では最大23%過大評価されていた一方、有害アウトカムについては過小されていた。