重度敗血症を発症し、回復した人は、その後中等度から重度の認知障害を発症するリスクが3倍超に増大することが報告された。また同発症後には、新たに現れる身体機能の制約数も増えるという。米国ミシガン大学医学校内科部門のTheodore J. Iwashyna氏らが、敗血症で入院した高齢者約1,200人について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年10月27日号で発表した。重度敗血症の罹患率は高く、また増加傾向にあるものの、その後の長期的な認知能力や身体機能に与える影響については、これまでほとんど調査されていなかった。
重度敗血症後の中~重度認知障害リスク、3.34倍に
同氏らは、1998~2006年に50歳以上の米国住民を抽出し行われた全米調査「HRS(Health and Retirement Study)」のうち、認知能力や身体機能などに関する情報の得られた9,223人のデータを元に、前向きコホート試験を行った。
HRSコホートのうち、重度敗血症で入院した人は1,194人、入院件数は1,520件だった。そのうち、回復した人は516人(入院時の平均年齢は76.9歳)だった。一方、被験者のうち重度敗血症以外で入院した人は、4,517人だった。
重度敗血症で入院した人は、中等度から重度の認知障害の罹患率が、発症前6.1%から発症後16.7%へと、10.6ポイント増加していた。多変量回帰分析の結果、重度敗血症は中等度から重度の認知障害リスクを、3.34倍(95%信頼区間:1.53~7.25)増大することがわかった。
敗血症以外の入院では認知障害リスクは増大せず
同様に身体機能の制約についても、重度敗血症後に新たな制約が高率にみられた。発症前に制約がみられなかった人において、発症後には新たな制約数が平均1.57(95%信頼区間:0.99~2.15)となっていた。また発症前に軽度から中等度の身体機能の制約がみられた人でも平均1.50(同:0.87~2.12)の新たな制約がみられた。
一方で、敗血症以外の理由による入院と、中等度から重度の認知障害発症リスクとには関連がみられなかった(オッズ比:1.15、95%信頼区間:0.80~1.67、重度敗血症との差に関するp=0.01)。退院後に現れた身体機能の制約数は、敗血症による入院の場合に比べ少なく、平均値は発症前に制約がなかった人で0.48(p<0.001)、軽度から中等度の制約があった人で0.43(p=0.001)だった。
また、認知能力や身体機能の低下は、最低8年間継続していた。著者は、「高齢者における重度敗血症は、新たな認知障害および身体機能障害を引き起こす独立した因子である。そのもたらす障害の影響は大きく、自立した生活能力を損なうことに結びついているようだ」と結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)