英国保健省のNabihah Sachedina氏らは、今後の新型インフルエンザ(H1N1ウイルス)対策のため、昨シーズンの小児死亡例についての解析を行った。背景には、0~18歳の新型インフルの罹患に関してバラつきがみられたことがある。Lancet誌2010年11月27日号(オンライン版2010年10月27日号)掲載より。
小児(0~17歳)の全死亡70例を解析
解析は、2009年6月26日~2010年3月22日に英国で報告された新型インフルに関する小児(0~17歳)の全死亡70例(平均年齢7歳)について行われた。いずれもデイリーレポートシステムによって報告され、カルテとの照合が行われた症例であり、新型インフル感染のラボ報告もしくは死亡診断書がある症例だった。
症例個々の病歴、症状、急性疾患の臨床経過はそれぞれの担当医から提供されており、新型インフルと推定された症例のデータは英国健康保護局(Health Protection Agency:HPA)から入手された。
主要評価項目は、集団死亡率と致死率だった。
死亡率は1歳未満児で最も高い
結果、昨シーズンの小児死亡率は、100万あたり6例だった。死亡率は、1歳未満児で最も高く、100万あたり14例だった。
死亡率は人種間で異なる傾向がみられ、英国白人小児の100万あたり4例(95%信頼区間:3~6)に比べ、バングラデシュ系小児(同47例、17~103)とパキスタン系小児(同36例、18~64)で高かった。
死亡した小児のうち15例(21%)は、新型インフルに感染する前は健康児だった。一方で、45例(64%)は、慢性神経学的、胃腸系、呼吸器系など重度な疾患を有していた。なかでも、慢性神経学的疾患を有する子どもの年齢標準化死亡率が最も高く、100万あたり1,536例だった。
また、入院中の死亡例は19例(27%)だった。これらは、退院後に死亡した例よりも、健康的で既存疾患もごく軽症であることが有意に認められた(p=0.0109)。
なお、オセルタミビル(商品名:タミフル)を投与されていたのは全体で45例(64%)で、症状発症から48時間以内に投与を受けていたのは7例だった。
これら解析結果を受け、Sachedina氏は、「ワクチン接種は、重症疾患および死亡リスクの高い小児に優先して行わなくてはならない。これら小児には、特定の既存疾患を有する子どもやいくつかの少数民族の子どもも対象に含まれる。また、入院前早期からのサポート的また治療的ケアも重要である」と報告をまとめている。