スタチンの肝機能異常の改善効果が明らかに:GREACE試験事後解析

提供元:ケアネット

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公開日:2010/12/16

 



スタチン治療は、軽度~中等度の肝機能異常患者に対して安全に施行可能で、検査値を改善し心血管疾患罹患率を低下させることが、ギリシャのテッサロニキ・アリストテレス大学Hippokration病院のVasilios G Athyros氏らによるGREACE試験の事後解析で明らかとなった。非アルコール性脂肪肝によると考えられる肝機能異常は、欧米人や日本人の約33%にみられると推定され、スタチンはこのような患者の肝機能や心血管イベントの改善に有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月24日号)掲載の報告。

スタチン治療例と非治療例で初回再発リスクの低下効果を評価




研究グループは、肝機能検査異常患者に対するスタチン治療の安全性と有効性の評価を目的に、Greek Atorvastatin and Coronary Heart Disease Evaluation(GREACE)試験の事後解析を行った。

GREACE試験は、75歳未満、LDLコレステロール>2.6mmol/L、トリグリセリド<4.5mmol/Lの冠動脈心疾患患者1,600例を対象に、テッサロニキ・アリストテレス大学ヒポクラテス病院で実施されたスタチン治療と通常治療(スタチンを含む場合あり)を比較するプロスペクティブな無作為化試験であった。

今回の事後解析の主要評価項目は、肝機能異常患者のうちスタチン治療を受けなかった症例に対する、中等度の肝機能異常(血清ALT値、AST値が正常上限値の3倍未満までと定義)を有し、スタチン治療を受けた患者の初回再発心血管イベントのリスク低下効果とした。このリスク低下は、スタチン治療例と非治療例における肝機能正常例の割合で評価した。

スタチン治療により心血管イベントの相対リスクが68%低下




ベースラインにおいて非アルコール性脂肪肝によると考えられる中等度の肝機能異常を呈した患者437例のうち、スタチン治療(主にアトルバスタチン〈商品名:リピトール〉24mg/日)を受けた群(227例)は検査値が改善した(p<0.0001)のに対し、スタチン治療を受けなかった群(210例)はALT値/AST値がさらに上昇した。

心血管イベントは、スタチン治療群の10%(22/227例)で発生(3.2イベント/100人・年)したのに対し、非スタチン治療群では30%(63/210例)に認められ(10.0イベント/100人・年)、スタチン治療による相対リスク低下率は68%であった(p<0.0001)。

この肝機能異常患者における心血管疾患に関するベネフィットは、肝機能が正常な患者に比べて大きかった(p=0.0074)。肝機能正常者の心血管イベント発生率は、スタチン治療群14%(90/653例、4.6イベント/100人・年)に対し、非スタチン治療群23%(117/510例、7.6イベント/100人・年)、相対リスク低下率は39%であった(p<0.0001)。

スタチン治療群(880例)のうち、肝臓関連の有害事象で治療を中止したのは7例(<1%)であった。

著者は、「非アルコール性脂肪肝によると考えられる軽度~中等度の肝機能異常患者に対するスタチン治療は安全に施行可能であり、検査値を改善し心血管疾患罹患率を低下させる」と結論している。

(菅野守:医学ライター)