高齢女性において、ビスホスホネート製剤5年以上の服用は、転子下または大腿骨骨幹部骨折のリスクを約2.7倍に増大することが明らかにされた。ただし、その骨折の発症率自体は、1年間で0.13%と低いことも示された。カナダ・トロントにあるSt. Michael's HospitalのLaura Y. Park-Wyllie氏らが、ビスホスホネート製剤を服用する68歳以上の女性20万人超について行った住民ベースのコホート内症例対照研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年2月23日号で発表した。ビスホスホネート製剤は骨粗鬆症治療の頼みの綱となる一方で、長期使用が骨リモデリングを抑制し非定型骨折の原因になっているのではないかとの懸念が持たれている。
ビスホスホネート製剤服用の20万人超を追跡
研究グループは、カナダのオンタリオ州に住む68歳以上の女性で、2002年4月1日~2008年3月31日にかけて、骨粗鬆症の治療としてビスホスホネート製剤の服用を開始した20万5,466人について、2009年3月31日まで追跡した。
主要解析は、転子下または大腿骨骨幹部骨折による入院とビスホスホネート製剤服用期間との関連。ケース群1人に対し、5人のコントロール群を抽出し検討が行われた。また所見の特異性を検証するために、骨粗鬆症性骨折の特性である大腿骨頸部または転子部骨折との関連も調べられた。
転子下または大腿骨骨幹部骨折が2.74倍に、ただし絶対リスクは低い
結果、被験者のうち転子下または大腿骨骨幹部骨折を発症したのは、0.35%にあたる716人だった。ビスホスホネート製剤を5年以上服用している人は、5年未満の一時的服用者に比べ、転子下または大腿骨骨幹部骨折発症に関する補正後オッズ比は、2.74(95%信頼区間:1.25~6.02)だった。
骨粗鬆症の典型的な症状である大腿骨頸部または転子部骨折は、9,723人に認められた。ビスホスホネート製剤の5年以上服用者は、5年未満の一時的服用者と比べ、補正後オッズ比0.76(同:0.63~0.93)と低減していた。
なお、ビスホスホネート製剤を5年以上服用していた5万2,595人で、転子下または大腿骨骨幹部骨折を発症したのは、服用後1年間で71人(0.13%)、同2年間で117人(0.22%)だった。
著者は、「高齢女性において、ビスホスホネート製剤5年以上服用者に、転子下または大腿骨骨幹部骨折のリスク増大が認められた。ただし、その絶対リスクは低い」と結論している。