入院患者心停止への除細動の遅れは日常茶飯事

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2008/01/23

 

心肺蘇生法に関する国際ガイドラインでは、院内で心室性不整脈による心停止が起きた場合、2分以内に除細動を行うことを推奨している。しかしこれまで、その現場レベルの実証データは、ほとんど報告されていない。本研究は米国心臓協会(AHA)が、米国内の医療機関の実態について報告したもので、処置の遅れはどれぐらいあるのか、処置の遅れと生存率との関係について報告している。NEJM誌2008年1月3日号より。

全米369病院で心停止患者6,789例を調査




本研究は、米国心臓協会(AHA)の米国心肺蘇生登録に参加している369の医療機関から、心室細動または無脈性心室頻拍で心停止を起こした患者6,789例を同定して行われた。多変量ロジスティック回帰を用いて除細動の遅れに伴う影響を確かめ、さらに、患者・病院特性の違いを補正したうえで、除細動が2分以上経ってから行われた場合と、生存退院率との関連性を検討している。

3割で除細動実施に遅れ




心停止から除細動実施までの時間の中央値は1分(四分位範囲:1分未満~3分)だったが、一方で除細動の遅れは全体の30.1 %(2,045例)で起きていた。

患者の生存退院率は、除細動が推奨時間以内なら39.3%、遅れた場合は22.2%で、有意な差がみられた(補正オッズ比0.48、95%信頼区間:0.42~0.54、P<0.001)。また除細動が1分遅れるごとに段階的に生存退院率が低下していくとの関連性もみいだされている(P<0.001)。

除細動遅れの特性は、患者が黒色人種だったこと、非心臓性疾患と診断されて入院していたこと、250床未満の病院だったこと、監視の行き届かない病棟だったこと、時間外(午後5時以降午前8時までの時間帯または週末など)だったことなど。

これらの結果を受け、「入院患者の心停止に対して除細動処置が遅れることは日常的であり、それが生存率低下と関連していることも判明した」と結論付けている。