心肺蘇生術を学校で教える動きは、ノルウェーでの先駆的な取り組み以降広がりを見せ、イギリスではBritish Heart財団の訓練プログラム「Heartstart UK」を学校で履修することになっている。11歳時で心臓マッサージの手法を会得するが、労力を要する心マが腕力的に不可能な生徒もおり、いったい何歳から効果的な心マが可能なのかという研究報告が、BMJ誌6月9日号で紹介された。ウェールズの首都にあるカーディフ大学のIan Jones氏らによる観察研究報告。
9~14歳児の心マ能力(深度、速度、部位)を評価
この種の先行研究は高学年対象のものがほとんどで、推奨年齢は9~13歳と報告されている。Jones氏らは、「何歳から」という点に焦点を置いて研究を行った。
対象は、カーディフの4つの学校の5年生(9~10歳)、7年生(11~12歳)、9年生(13~14歳)の生徒計159例。生徒らは一次救命処置技術を1レッスン20分間学んだ。主要評価項目は、人体模型への3分間にわたる心マ効果。学年ごとに胸部への圧迫深度、速度、部位の正確さを測り、年齢、体重、身長と照らし合わせて解析した。
年齢と体重が鍵、低学年でも原則を学ぶことは可能
心マは全員実行することはできたが、5年生は、ガイドラインで推奨される圧迫深度(38~51mm)まで胸部を圧縮することができなかった。7年生の19%および9年生の45%の生徒は、十分な深度を圧迫することができた。9年生については、成人とほぼ変わりない心マが可能だった。
圧迫深度は、年齢、体重、身長との有意な関係を示し(P<0.001)、多変量解析の結果、年齢と体重のみ関与することが明らかとなった(P=0.95)。
年齢と性別、体重との関連性は見いだされず、身長と3分間の心マの評価との関連性も見いだされなかった。同様に、学年と圧迫部位の正確さとの関連性も見いだされなかった。
Jones氏らは、十分な深度の心マを小児ができるかどうかの決定要因は、年齢と体重にあり、今回の結果から、心肺蘇生術教示年齢を13~14歳とする現在の推奨年齢は妥当であるとしながらも、速度と部位の正確さについては年齢差が見られなかったことから、胸部の圧迫が腕力的に不可能な低学年でも、高学年同様に心マの原則を学ぶことはできるとまとめた。
(宮下 努:医療ライター)