統合失調症および双極性障害の患者は、一般人に比べて実質的に若くして自然死していることが、イギリス・オックスフォード大学のUy Hoang氏らの調査で示された。統合失調症/双極性障害患者は、自然死、不自然死の割合がともに一般人よりも高い。イギリスでは精神疾患患者の自殺や不自然死は安定化しつつあるとされ、最近の政府のメンタルヘルス戦略では「早死にする精神障害者は減少するだろう」と明言しているという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載の報告。
統合失調症/双極性障害患者の死亡率を評価するレトロスペクティブな記録調査研究
研究グループは、統合失調症/双極性障害患者と一般住民の死亡率の差を評価するために、レトロスペクティブな記録調査研究を行った。
1999~2006年までの病院統計データと退院患者の死亡登録データを用い、統合失調症あるいは双極性障害の診断で入院治療を受けた患者について、退院後1年間追跡調査を行った。
1999年と2006年の統合失調症/双極性障害患者と一般人の死亡率を比較するために、年齢標準化死亡比を算出した。経時的な傾向の評価にはPoisson分布検定を用いた。
標準化死亡比:統合失調症は1.6から2.2へ、双極性障害は1.3から1.9へ
2006年までに、統合失調症/双極性障害患者の標準化死亡比は一般人の約2倍に達し、死亡率の差は経時的に広がる傾向がみられた。すなわち、統合失調症の退院患者の標準化死亡比は1999年が1.6(95%信頼区間:1.5~1.8)、2006年は2.2(同:2.0~2.4)であり、双極性障害ではそれぞれ1.3(同:1.1~1.6)、1.9(同:1.6~2.2)であった。
標準化死亡比は自然死よりも不自然死で高かったが、全死亡の約4分の3は自然死として認定されており、全死因死亡の増大の主な原因は、循環器および呼吸器疾患による自然死の増加であった。
著者は、「統合失調症および双極性障害の患者は、一般人に比べて実質的に若くして自然死していることがわかった」と結論し、「退院後の精神疾患患者と一般人の死亡率の差が持続的に増大している原因を解明し、これらの患者の自然死、不自然死双方のリスク因子をターゲットとした継続的な調査を進める必要がある」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)