ココアを含む食品の日常的な摂取が、心血管系の死亡率低下に寄与することは観察研究で明らかにされている。またココアの高用量摂取が、2週間ほどの短期介入でも血管内皮機能を高め、ココア・ポリフェノールの作用で血圧を低下させることが示唆されてもいる。しかし習慣的なココア摂取が血圧に及ぼす臨床的効果とそのメカニズムは不明だ。そこで、ドイツ・ケルン大学のDirk Taubert氏らは、ポリフェノールの豊富なチョコレートを低用量摂取した場合の、血圧変化について判定した。JAMA誌7月4日号に掲載。
ポリフェノール含有・非含有チョコレート摂取を無作為盲検
治験は2005年1月から2006年12月にかけてドイツのプライマリ・ケア・クリニックで行われた。高血圧前症または第I期高血圧症で、付随的な危険因子を持たず薬物投与も受けていない56歳から73歳までの44例(女性24例、男性20例)を対象に、無作為盲検並行群方式で実施。
対象者には18週間、30mgのポリフェノールを含んだ糖分・脂肪分の少ないダークチョコレートを毎日6.3g(30kcal)、もしくはポリフェノールを含まないホワイトチョコレートを無作為に割り当て摂取させた。
主要評価項目は18週後の血圧値の変化。第2評価項目は、血管拡張作用のあるS-ニトロソグルタチオンと、酸化ストレスマーカー8-isoprostaneの血漿中濃度変化とココア・ポリフェノールのバイオアベイラビリティ(生物学的利用性)とした。
高血圧有病率は86%から68%まで減少
18週間で、ダークチョコレート摂取群の収縮期血圧が平均2.9(1.6)mmHg、拡張期血圧も1.9(1.0)mmHg下がり(P<0.001)、体重、血漿中の脂質、ブドウ糖、8-isoprostaneのレベルに変化はなかった(P<0.001)。高血圧有病率は86%から68%まで減少した。
また、血圧低下とともにS-ニトロソグルタチオンが持続的に増加し[0.23(0.12)nmol/L(P<0.001)]、血漿中でのココア・フェノール出現に結びついていた。
一方、ホワイトチョコレートの摂取群では血圧、血漿中マーカーとも変化は見られなかった。
標本数は小さいが、至適血圧より高値である以外は健常な人が、食事の際にポリフェノールが豊富に含まれるチョコレートを少量摂取すると、体重増加などを伴わずに血圧が効果的に低下するとともに、S-ニトロソグルタチオン形成も改善されたと報告した。
(朝田哲明:医療ライター)