昨年12月に開発が中止されたHDL増加剤torcetrapibは、混合型高脂血症患者の頸動脈壁肥厚抑制においてもスタチンに追加する有用性が認められなかった。オランダ・University Medical Center UtrechtのMichiel L Bots氏らがLancet誌7月14日号においてRADIANCE 2試験の結果として報告した。
CETP阻害薬torcetrapibの抗動脈硬化作用を否定する臨床試験はILLUSTRATE、RADIANCE 1に次いで本報告で3つ目となる。
2年間弱の頸動脈壁肥厚抑制作用はプラセボと同等
本試験の対象患者は、トリグリセライド(TG)が150mg/dL以上、LDLコレステロール(LDL-C)値が米国脂質ガイドライン(NCEP ATP III)において薬物治療対象となる18~70歳の男女。4週間の脂質低下薬中止導入期間後、全例がアトルバスタチンを服用し、原則としてLDL-CがATP III目標値を達成するまで増量した。この導入期間を完遂できた752例をアトルバスタチン服用のまま、torcetrapib群(377例)とプラセボ群(375例)に無作為化した。
平均22ヵ月の追跡期間後、1次評価項目である「頸動脈壁内膜・中膜最大厚」はtorcetrapib群で「0.025mm/年」増加しており、プラセボ群の「0.030mm/年」と有意差はなかった(p=0.46)。
HDL-Cが著明増加、血圧は軽度上昇
試験が早期終了したため平均追跡期間は22ヵ月となったが、24ヵ月追跡できた681例で検討すると、torcetrapib群のHDLコレステロール(HDL-C)値は47.6mg/dLから77.4mg/dLに増加し、プラセボ群(46.8mg/dL)よりも有意に高値となっていた。またLDL-Cの変化率もプラセボ群が4.4%増加したのに対しtorcetrapib群では13.3%低下していた(群間差:p<0.0001)。
一方、血圧はこれまでに報告されているILLUSTRATEやRADIANCE 1と同様、torcetrapib群で有意に上昇していた(127.9/77.1mmHg、プラセボ群:121.2/75.4mmHg、p<0.0001)。研究者らはこの血圧の差が、torcetrapibによる脂質代謝改善がもたらす頸動脈肥厚抑制を相殺した可能性を指摘している。
他社が現在開発中とされる2つのCETP阻害薬には昇圧作用がないと言われており、それらを用いた臨床試験の結果が待たれる。
(宇津貴史:医学レポーター)