深部静脈血栓症(DVT)が疑われる妊娠中および出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は、安全で合理的なスクリーニング法であることが示された。同スクリーニングで陰性でありながら、後にDVTの診断を受けた人の割合は1.1%と低かったという。フランス・Cavale Blanche大学のGregoire Le Gal氏らが、妊娠中・出産後の女性200人超について行った前向き試験で明らかにしたもので、BMJ誌2012年5月5日号(オンライン版2012年4月24日号)で発表した。妊娠はDVTのリスク因子であることが知られているが、一方で妊婦はDVTでなくても、それと似た症状を発症することが少なくないことも知られている。
フランスとスイスの18ヵ所で210人を検査し追跡
同研究グループは、フランスとスイスの18カ所の血管治療専門医療機関で、DVTが疑われた妊娠中または産後の女性226人について、単回の圧迫超音波検査によるDVTスクリーニングを行い、その後のDVT発症の有無について追跡した。
被験者のうち16人は、主に肺血栓塞栓症の疑いにより、除外された。残った210人の、年齢中央値は33歳(四分位範囲:28~37)、妊娠中の女性は167人、出産後の女性は43人だった。
当初DVT診断を受けなかった177人のうち、2人がDVT発症
被験者のうち、圧迫超音波検査などでDVTの診断を受けたのは22人(10.5%)だった。また、同検査結果が陰性だった人のうち10人は、標準用量の抗凝固療法を行った。
DVTの診断を受けず、また十分な抗凝固療法を行わなかった177人について、3ヵ月間追跡調査を行った。追跡期間中にDVTの診断を受けたのは、2人(1.1%、95%信頼区間:0.3~4.0)だった。
同割合は、これまでに妊娠していない患者について行った静脈造影法によるDVTスクリーニングで、陰性でありながら後にDVTの診断を受けた割合と同等だった。研究グループは、「妊娠中または出産後の女性に対し、単回の圧迫超音波検査は安全で有効なDVTスクリーニングである」と結論付けた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)