運動不足の解消で寿命が0.68年延長

提供元:ケアネット

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公開日:2012/08/02

 

冠動脈心疾患や糖尿病、がんなどの主な非伝染性疾患の6~10%が運動不足に起因し、運動不足が解消されれば寿命が0.68年(約8ヵ月)延長することが、米国ハーバード大学医学校ブリガム・アンド・ウェイメンズ病院のI-Min Lee氏らLancet Physical Activity Series Working Groupの調査で明らかとなった。運動不足は、冠動脈心疾患、2型糖尿病、乳がん、結腸がんなどの非伝染性疾患のリスクを増大させ、余命を短縮することを示す高度なエビデンスが存在する。多くの国では国民の運動不足が指摘されているため、運動不足と非伝染性疾患の関連は保健医療上の重要な課題となっている。Lancet誌2012年7月21日号(オンライン版2012年7月18日号)掲載の報告。

運動不足の影響を定量的に評価
研究グループは、運動不足の集団が運動を行った場合に、どの程度疾患が回避され、余命の延長が得られるかを予測することで、主な非伝染性疾患に及ぼす運動不足の影響を定量的に評価した。

疾病負担の解析では、運動不足が解消した場合の疾患回避率を予測するために、個々の非伝染性疾患に関する標準的な条件を用いて運動不足と関連する人口寄与割合(PAF)を国ごとに算出した。生命表分析を行って余命の延長を推算した。

健康リスクは喫煙や肥満と同等
冠動脈心疾患の疾病負担の6%(最低値は東南アジア地域の3.2%、最高値は地中海東部地域の7.8%)が運動不足に起因すると推定された。運動不足の2型糖尿病への寄与は7%(範囲:3.9~9.6%)、乳がんへの寄与は10%(5.6~14.1%)、結腸がんへの寄与は10%(5.7~13.8%)と推察された。

2008年に世界で発生した若年死の9%(5.1~12.5%)、すなわち5,700万件の若年死のうち530万件が運動不足に起因していた。

運動不足が、完全ではないまでも10%解消されれば年間に53万3,000件以上、25%解消された場合は130万件以上の死亡が回避されると推定された。運動不足が完全に解消されれば、世界の余命は中央値で0.68年(0.41~0.95年)延長すると予測された(ちなみに、日本は0.91年の延長)。

著者は、「世界的に、運動不足の健康への影響は大きい。不健康な行動の低減や除去により、健康は実質的に改善される可能性がある」と結論づけ、「運動不足の健康リスクは、確立されたリスク因子である喫煙や肥満と同等なことがわかった。1日15~30分の早歩きなどの適度な運動が健康効果をもたらすことが知られており、運動不足の低減に向けたあらゆる尽力を支援すべきである」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 名郷 直樹( なごう なおき ) 氏

武蔵国分寺公園クリニック 名誉院長

J-CLEAR理事