妊娠高血圧腎症が疑われる妊婦では、スポット尿を用いた尿蛋白/クレアチニン比の評価が、重度蛋白尿の検査法として有用なことが、英国・バーミンガム大学のR K Morris氏らの検討で示された。妊娠高血圧腎症は多系統的血管内皮障害(multisystem endothelial disease)で、糸球体血管内皮症を来し、重症化すると腎機能障害や腎不全に至る。妊婦および周産期の合併症や死亡の主な原因で、妊婦の2~8%が罹患するという。スポット尿検体を用いた尿蛋白/クレアチニン比は24時間尿蛋白の予測値とよく相関し、妊娠高血圧腎症の診断法として有望視されている。BMJ誌2012年7月21日号(オンライン版2012年7月9日号)掲載の報告。
スポット尿検査による重度蛋白尿の診断精度をメタ解析で評価
研究グループは、妊娠高血圧腎症が疑われる妊婦において、重度蛋白尿や不良な妊娠アウトカムに関する2つのスポット尿検査(尿蛋白/クレアチニン比、尿中アルブミン/クレアチニン比)の診断精度(accuracy)を評価するために系統的レビューとメタ解析を行った。
データベースの1980~2011年のデータを検索し、論文の参考文献リストを調査し、専門雑誌に当たり、研究者と連絡を取った。対象は、高血圧がみられる妊婦に関する診断的試験であり、スポット尿検体を用いた尿蛋白/クレアチニン比や尿中アルブミン/クレアチニン比と24時間尿蛋白排泄量や不良な妊娠アウトカムを比較した試験とした。
20試験、約3,000人の妊婦のデータを解析
20試験に参加した2,978人の妊婦が解析の対象となった。多変量解析には、蛋白尿の検出に尿蛋白/クレアチニン比の評価を行った13試験が含まれた。
尿蛋白/クレアチニン比の閾値は0.13~0.5で、感度は0.65~0.89、特異度は0.63~0.87であり、サマリー受信者動作特性(ROC)曲線下面積は0.69だった。全試験の尿蛋白/クレアチニン比の最適閾値(感度と特異度を統合して最適化)の平均値は0.30~0.35と推定された。しかし、試験の診断精度には閾値に関して著明な不均一性が認められた。
尿蛋白/クレアチニン比と不良な妊娠アウトカムの関連を調査した試験はなかった。尿中アルブミン/クレアチニン比のメタ解析は不可能だった。尿中アルブミン/クレアチニン比と不良な妊娠アウトカムについて検討した試験が1つあり、周産期死亡の感度は0.82(同:0.48~0.98)、特異度は0.59(同:0.51~0.67)だった。
著者は、「妊娠高血圧腎症が疑われる妊婦では、スポット尿を用いた尿蛋白/クレアチニン比の評価が、重度蛋白尿の有望な検査法となることが示された。一方、診断精度の不均一性のため、日常診療への尿蛋白/クレアチニン比の導入を支持するに十分なエビデンスはない。また、尿中アルブミン/クレアチニン比や、不良な妊娠アウトカムを予測する検査のエビデンスも不十分である」と結論している。
(菅野守:医学ライター)