肥満者の2型糖尿病発症予防には肥満外科手術が有効

提供元:ケアネット

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公開日:2012/09/05

 

 2型糖尿病の発症予防について、肥満者においては肥満外科手術が通常ケアと比べて顕著に有効とみなされることが、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLena M.S. Carlsson氏らが「Swedish Obese Subjects(SOS)study」の長期追跡データを解析し報告した。減量は2型糖尿病に対し防御的に作用するが、行動変容だけで減量を維持し続けることは難しい。肥満外科手術は、2型糖尿病発症リスクが最も高い重度肥満者において、減量を維持可能な現在唯一の治療法で、多くの試験で糖尿病を軽減することが報告されている。しかし長期追跡と対照群が必要であるため、予防効果について報告した試験はほとんどなかったという。NEJM誌2012年8月23日号掲載報告より。

肥満外科手術群とマッチ対照群の追跡最長15年時点の2型糖尿病発症率を比較
Carlsson氏らは、2型糖尿病予防に関する肥満外科手術の長期にわたる効果を検証するため、SOSの追跡データを解析した。SOSは1987年9月1日~2001年1月31日の間に被験者登録が行われた現在進行形の、肥満外科手術と通常ケアの長期効果の比較を目的とした非無作為化前向き対照介入比較試験。

Carlsson氏らの解析対象となったのは、肥満外科手術を受けた1,658例と、マッチさせた(個人レベルではなくグループレベルで適合した)対照群1,771例で、全員ベースラインでは2型糖尿病を有していなかった。肥満外科手術の内訳は、胃バンディング術19%、垂直遮断胃形成術(VBG)69%、胃バイパス術12%。被験者は37~60歳でBMIが男性>34、女性>38だった。

解析は、メイン試験の副次エンドポイントとして事前に規定されていた2型糖尿病の発症率にフォーカスされ行われた。解析が行われた2012年1月1日現在、被験者は最長で15年追跡されていた。なお15年時点で、36.2%がオリジナル試験から脱落、15年追跡調査を受けていなかった被験者は30.9%だった。

2型糖尿病発症率について、手術群の対照群に対する補正後ハザード比は0.17
両群の被験者はマッチングにもかかわらず、ベースラインでの特性が有意に異なった。たとえば対照群よりも手術群で、ベースラインの体重がより高く、また危険因子の頻度がより高かった。

追跡期間中の2型糖尿病の発症は、対照群392例に対し手術群110例だった。発症率は1,000人・年につき対照群28.4、手術群6.8だった。手術群の補正後ハザード比は0.17(95%信頼区間:0.13~0.21、p<0.001)だった。

肥満外科手術の効果は、空腹時血糖値異常の有無による影響が認められた(交互作用のp=0.002)。しかしBMIによる影響はみられなかった(p=0.54)。

エンドポイントに焦点を合わせたということを含む感受性解析においても、全体としての結論に変わりはなかった。

手術群における術後死亡率は0.2%だった。また合併症のために90日以内に再手術となったのは2.8%だった。

これら解析結果を踏まえ、著者は、「肥満外科手術は、肥満者の2型糖尿病の発症予防に、通常ケアよりも顕著に有効と思われる」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)