高血圧症のない人もある人と同様に、死亡および末期腎不全のリスクとして慢性腎臓病(CKD)を考慮すべきであることが示された。米国・ジョンズ・ホピキンスブルームバーグ公衆衛生校のBakhtawar K Mahmoodi氏らが、メタ解析の結果、報告した。高血圧症は、CKD患者では最もよくみられる共存症だが、推定糸球体濾過量(eGFR)およびアルブミン/クレアチニン比(ACR)といった腎疾患尺度と、死亡や末期腎不全との関連を高血圧症の状態別でみた場合の影響はこれまで明らかとなっていなかった。Lancet誌2012年11月10日号(オンライン版2012年9月24日号)掲載報告より。
高血圧症有無別で死亡および末期腎不全と腎疾患尺度との関連を検討
研究グループは2011年3月~2012年6月の間に、Chronic Kidney Disease Prognosis Consortiumの基準に適合する試験を選択しメタ解析を行った。
Cox比例ハザードモデルを用いて、高血圧症の有無別に死亡および末期腎不全と、eGFRおよびACRとの関連についてハザード比(HR)を算出した。
解析は、45のコホート(一般集団試験コホート25、ハイリスク試験コホート7、慢性腎臓病試験コホート13)からの、112万7,656例(うち高血圧症あり36万4,344例)のデータを組み込んで行われた。
eGFRとACRでみた死亡・末期腎不全のリスクは高血圧症にかかわりなくほぼ同程度
結果、一般集団およびハイリスクコホートにおいて、eGFRが一定の場合の全死因死亡リスクは、高血圧症がある人が高血圧症のない人よりも高かった(1.1~1.2倍)。
一方で同コホートにおいて、高血圧症の状態にかかわりなく、低eGFRと高ACRと、死亡との関連が認められた。
eGFR範囲値45~75mL/分/1.73m
2での相対リスクの上昇は、高血圧症がない人のほうが高血圧症がある人よりも大きく、eGFR低値での死亡リスクは両群でほぼ同程度であった。すなわち、eGFR 45mL/分/1.73m
2 vs.参照値90mL/分/1.73m
2の全死因死亡ハザード比は、高血圧症がない人で1.77(95%信頼区間:1.57~1.99)であるのに対して、高血圧症がある人は同1.24(1.11~1.39)であった(全相互作用のp=0.0003)。
同様に、ACR値についても、ACR 300mg/g vs.同参照値5mg/gのハザード比は、2.30(同:1.98~2.68)、2.08(同:1.84~2.35)であった(全相互作用のp=0.019)。
また、心血管死亡についても同様の結果が得られた。末期腎不全についてもeGFRおよびACRとの関連がみられたが、高血圧症の状態による差は認められなかった。さらにCKDコホートの検討においても同様の結果が得られた。
これらの結果について著者は、「CKDは、高血圧症の状態にかかわらず注意と治療を怠らないようにすべきとの根拠を示す知見が得られた」とまとめている。