原発性自然気胸に対する単純吸引+ドレナージ施行後のミノサイクリンを用いた胸膜癒着術は、安全に実施可能で、単純吸引+ドレナージ単独よりも再発抑制効果が高いことが、国立台湾大学のJin-Shing Chen氏らの検討で明らかとなった。原発性自然気胸の標準的な初回治療は単純吸引とドレナージだが、文献的な1年後の再発率は約30%(16~52%)に達する。そのため、さまざまな治療アプローチの開発が進められており、化学物質の胸腔内注入による胸膜癒着術は手術患者、非手術患者の双方で再発を抑制することが示されている。Lancet誌オンライン版2013年2月18日号掲載の報告。
原発性自然気胸に対する胸膜癒着術追加の再発抑制効果を検討
研究グループは、原発性自然気胸に対する標準的な初回治療である単純吸引+ドレナージ施行後の、ミノサイクリンを用いた胸膜癒着術の追加による再発抑制効果を評価するプロスペクティブな非盲検無作為化対照比較試験を実施した。
対象は、15~40歳、原発性自然気胸の初期症状[胸部X線画像で2cm以上のエア像(rim of air)]がみられ、ピッグテールカテーテルによるドレナージ施行後は肺が完全に拡張し吸気の漏出を認めず、血液学的所見が適正で、腎機能および肝機能が正常な症例とした。
これらの原発性自然気胸の患者が、ピッグテールカテーテルによる単純吸引+ドレナージ施行後に、ミノサイクリン胸腔内注入による胸膜癒着術を行う群またはそれ以上の治療は行わない群(対照)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は1年後の気胸再発率とした。
1年後の気胸再発率:29.2% vs 49.1%
2006年12月31日~2012年6月30日までに台湾の2施設から214例が登録され、ミノサイクリン群に106例(平均年齢21.7歳、男性87.7%、平均身長1.72m、平均体重57.4kg、平均BMI 19.2kg/m
2)が、対照群には108例(同:22.0歳、88.9%、1.73m、58.6kg、19.4kg/m
2)が割り付けられた。
割り付け後7日以内の治療不成功例が、ミノサイクリン群で14例、対照群では20例認められた。1年後の気胸再発率は、ミノサイクリン群が29.2%(31/106例)と、対照群の49.1%(53/108例)に比べ有意に良好であった(p=0.003)。
鎮痛薬(ペチジン)の投与を要した患者(67.9% vs 19.4%、p<0.0001)や用量(34.0mg vs 10.2mg、p<0.0001)はミノサイクリン群で多かったが、施術時間(73.0分 vs 70.3分、p=0.76)や術後入院期間(3.2日 vs 3.6日、p=0.24)、総入院期間(5.0日 vs 5.2日、p=0.45)は両群で同等だった。治療に関連する合併症は両群ともにみられなかった。
著者は、「原発性自然気胸に対する単純吸引+ドレナージ施行後のミノサイクリン胸膜癒着術は安全に実施可能で、単純吸引+ドレナージ単独よりも高い再発抑制効果を示した」と結論し、「再発率抑制の結果として、胸腔鏡手術を要する患者も減少した。今後、ミノサイクリン胸膜癒着術は標準治療の補助治療とすべきと考えられる」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)