慢性胃食道逆流症(GORD)への腹腔鏡下噴門形成術は、薬物治療と比べて長期的な生活の質(QOL)についても改善することが明らかにされた。英国・アバディーン大学のA.M.Grant氏らが行った多施設共同無作為化試験「REFLUX」の結果で、BMJ誌オンライン版2013年4月18日号で発表された。GORD患者に対する腹腔鏡下噴門形成術は、短期的な症状の軽減については、薬物治療よりも良好である可能性が高いことを示すエビデンスは示されていたが、長期的アウトカムについては不明だった。
5年後のQOLスコアを比較
研究グループは2001~2004年にかけて、英国内21ヵ所の医療機関においてGORD患者810例について試験を開始した。被験者は、試験開始時点でGORD症状が12ヵ月以上継続しており、無作為化または自己選択により、噴門形成術または薬物治療を受けた。噴門形成術のタイプについては外科医が選択し、また薬物治療については専門医がその最適性について再検討した。両群とも治療管理については担当医の裁量に任され通常プライマリ・ケアで行われた。
5年後に追跡可能だった246例について、噴門形成術と内科的治療によるアウトカムを比較した。
主要アウトカムは、生活の質(QOL)に関する疾患特異的質問票(REFLUX質問票)に対する自己申告に基づく回答のスコアだった。その他にも、健康状態(SF-36、Euro-QOL EQ-5Dによる)の評価、逆流症予防薬の服用、合併症について調べた。
5年後QOLは手術群で良好、嚥下障害や嘔吐障害などの有害事象発生率は両群で同等
5年後の評価時に噴門形成術を行っていたのは、手術群に無作為化された患者の63%に当たる112例と、薬物治療群に割り付けられた患者の13%に当たる24例だった。
5年後に回答の得られた被験者のうち、逆流症予防薬を服用していたのは、手術群44%に対し、薬物治療群では82%と2倍近くに上った。
また5年後のREFLUXスコアも、手術群が薬物治療群より有意に高く、平均格差は8.5(95%信頼区間:3.9~13.1、p<0.001)だった。
5年後のSF-36スコアやEQ-5DスコアといったQOL指標についても、手術群が薬物治療群より良好だったが、有意差はなかった。
嚥下障害、鼓腸、嘔吐障害の長期発生率については、いずれも両群で同程度だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)