イブルチニブ、再発・難治性CLLで高い長期寛解率を達成/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/06/28

 

 ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブ(ibrutinib、国内未承認)は、再発・難治性慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)の治療において高い有用性を示す可能性があることが、米国・オハイオ州立大学のJohn C. Byrd氏らの検討で明らかとなった。BTKはB細胞受容体シグナル伝達系の主要コンポーネントで、腫瘍微小環境との相互作用を誘導し、CLL細胞の生存や増殖を促進するとされる。イブルチニブはBTKを阻害する経口薬で、正常T細胞には有害な影響を及ぼさないという特徴を持ち、CLL、SLLを含む第I相試験で有望な安全性と抗腫瘍効果が確認されている。NEJM誌オンライン版2013年6月19日号掲載の報告。

2種類の用量を第Ib/II相試験で評価
 研究グループは、再発・難治性のCLL、SLLに対するイブルチニブの安全性および有効性を評価する第Ib/II相試験を実施した。2010年5月~2011年8月までに、多くが高リスク病変を持つCLL、SLL患者85例が登録された。

 CLLが82例、SLLは3例で、年齢中央値は66歳(37~82歳)、男性が76%であった。Stage III/IVが55例(65%)、前治療数中央値は4(1~12)であり、細胞遺伝学的異常として17p13.1欠失が33%、11q22.3欠失が36%に認められた。

 このうち51例にはイブルチニブ 420mgが1日1回、経口投与され、34例には840mgが同様に投与された。

全奏効率71%、無増悪生存率75%、全生存率83%
 フォローアップ期間中央値20.9ヵ月の時点で、54例(64%)が治療継続中で、31例(36%)は治療を中止していた。

 有害事象のほとんどがGrade 1/2であり、一過性の下痢、疲労感、上気道感染症などがみられた。血液毒性は最小限にとどまったため、患者は治療を継続することが可能であった。

 全奏効率(ORR)は420mg群が71%(完全奏効[CR]2例、部分奏効[PR]34例)、840mg群も71%(PR 24例)であった。さらに、持続性リンパ球増多症を伴うPRが、420mg群の10例(20%)、840mg群の5例(15%)で達成された。進行病変、前治療数、17p13.1欠失などの治療開始前に確認された臨床的、遺伝学的リスク因子は、奏効とは関連しなかった。

 イブルチニブは用量にかかわらず良好な長期寛解をもたらし、フォローアップ期間26ヵ月時における全症例の推定無増悪生存率(PFS)は75%、全生存率(OS)は83%であった。

 著者は、「イブルチニブは、高リスクの遺伝子病変を有する再発・難治性CLLおよびSLLの治療において高い長期寛解率を達成した」と結論し、「本薬剤は良好な治療指数(therapeutic index)を有することから他剤との併用療法が進められる可能性があるが、単剤でも多くのCLL患者に長期寛解をもたらすと考えられる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 大田 雅嗣( おおた まさつぐ ) 氏

福島県立医科大学会津医療センター 血液内科学 教授

J-CLEAR推薦コメンテーター