せん妄や認知症の高齢者、専門病棟への入院で患者の精神状態や家族満足度は改善/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2013/07/18

 

 せん妄や認知症の高齢者は、精神的ケアの専門家と医療者が連携する専門病棟に入院することで、通常の老人病棟への入院に比べ、患者の精神状態や家族介護者の満足度が改善することが報告された。一方で、自宅への一時帰宅日数や死亡率などについては改善は認められなかった。英国・ノッティンガム大学のSarah E Goldberg氏らが行った、無作為化比較試験「NIHR TEAM」の結果で、BMJ誌2013年7月2日号で発表した。

専門病棟と老人病棟で、3ヵ月以内の在宅滞在日数を比較
 研究グループは本検討で、認知症高齢者に対する総合病院での最適な急性期治療モデルを開発し評価することを目的とした。

 65歳以上で“意識の混乱”が診断され入院をした600例の高齢者を対象に無作為化試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方は、せん妄や認知症の患者への最適治療を目的にした専門病棟へ、もう一方は通常の急性期老人病棟への、それぞれの入院が割り付けられた。

 専門病棟は、内科的および精神的ケア専門家との連携を特徴とし、せん妄や認知症のスタッフトレーニング強化や、患者中心の認知症ケア(チーム医療、環境調整、せん妄予防、家族ケアなど)が行われた。

 主要評価項目は、入院割り付け後90日時点までの自宅で過ごした日数とした。副次アウトカムは、客観的に第三者が確認した患者の経験(家族介護者による病院ケアの満足度)だった。評価にあたり、割り付け情報は可能な限りブラインド化された。

患者の精神状態や家族介護者の満足度は改善したが、在宅滞在日数などは同程度
 結果、入院後90日時点までの在宅滞在日数の中央値は、専門病棟群51日、対照群45日と、両群で有意差はなかった(両群格差の95%信頼区間:-12~24、p=0.3)。当初の入院日数中央値についても、それぞれ11日だった。死亡率もそれぞれ22%と25%、再入院率も32%と35%、介護施設への入所率も20%と28%と、いずれも両群で有意差はなかった。

 自宅に戻った患者は、専門病棟群は中央値70.5日を対照群は同71.0日を過ごしていた。

 一方、肯定的な気分で周囲への関心を示した時間を有したのは、専門病棟群の患者が79%と、対照群の68%と比べ有意に多く(p=0.03)、感情的・精神的ニーズに見合ったスタッフとのやり取りも多かった(p<0.001)。

 また、家族介護者の満足度も、専門病棟群のほうが対照群に比べ、有意に高く(p=0.004)、重大な不満は少なかった(p=0.05)。

 著者は、「健康状態やサービス利用については十分なベネフィットは認められなかったが、せん妄や認知症の専門的なケアは、患者の経験や介護者の満足度を改善した」と述べ、「患者の経験や介護者の満足度は、高齢患者が豊かな終末期を迎えられるかを図る適切な方法といえるだろう」と結論している。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)