冠動脈バイパス術(CABG)を受ける患者に対してストレス潰瘍の予防目的でしばしば投与される胃酸分泌抑制薬について、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のほうがH2ブロッカーよりも、術後肺炎リスクが1.19倍とやや高いことが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrian T Bateman氏らが、全米約500病院からの患者データが集積されているPremier Research Databaseを用いた後ろ向きコホート研究の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2013年9月19日号掲載の報告より。
CABG患者2万例超についてPPI対H2ブロッカーの術後肺炎発生を調査
術後肺炎は、心臓手術後によくみられる(2~10%)死亡リスクの高い(20~50%)合併症である。これまでPPIおよびH
2ブロッカーの院内肺炎リスクとの関連を比較検討した報告はあるものの相反する結果が示されてきた。また心臓手術後患者を対象とした検討については、単施設対象の後ろ向き研究で、PPIのほうが2.7倍高かったという報告があるが、その一報にとどまっていたという。
今回研究グループが検討したPremier Research Databaseには、2004~2010年にCABGを受けた2万1,214例が登録されていた。
そのうち9,830例(46.3%)がPPIを、1万1,384例(53.7%)がH
2ブロッカーを、術後間もなく投与開始されていた。
主要評価項目は、診断コードが付いた術後肺炎の発生とした。
PPI群の相対リスク1.19、1,000患者当たり8.2例増大
入院期間中の術後肺炎の発生は、PPI群5.0%(492/9,830例)、H
2ブロッカー群4.3%(487/1万1,384例)であった。
傾向スコア(患者特性)補正後も、PPI群の術後肺炎発生リスクはH
2ブロッカー群よりも高率のままだった(相対リスク:1.19、95%信頼区間[CI]:1.03~1.38)。
また、操作変数(病院がどちらの薬を好んでいるか)について補正解析後、PPI使用はH
2ブロッカー使用と比べて、1,000患者当たり8.2例(95%CI:0.5~15.9)の術後肺炎リスク増大と関連していた。
著者は、「ストレス潰瘍予防目的のPPI使用は、H
2ブロッカー使用と比べて術後肺炎リスクがやや高い。同リスクは、さまざまな方法による交絡因子で補正後も変わらなかった」とまとめている。