ストレス潰瘍予防目的のPPI、術後肺炎リスクを増大/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/10/07

 

 冠動脈バイパス術(CABG)を受ける患者に対してストレス潰瘍の予防目的でしばしば投与される胃酸分泌抑制薬について、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のほうがH2ブロッカーよりも、術後肺炎リスクが1.19倍とやや高いことが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrian T Bateman氏らが、全米約500病院からの患者データが集積されているPremier Research Databaseを用いた後ろ向きコホート研究の結果、報告した。BMJ誌オンライン版2013年9月19日号掲載の報告より。

CABG患者2万例超についてPPI対H2ブロッカーの術後肺炎発生を調査

 術後肺炎は、心臓手術後によくみられる(2~10%)死亡リスクの高い(20~50%)合併症である。これまでPPIおよびH2ブロッカーの院内肺炎リスクとの関連を比較検討した報告はあるものの相反する結果が示されてきた。また心臓手術後患者を対象とした検討については、単施設対象の後ろ向き研究で、PPIのほうが2.7倍高かったという報告があるが、その一報にとどまっていたという。

 今回研究グループが検討したPremier Research Databaseには、2004~2010年にCABGを受けた2万1,214例が登録されていた。

 そのうち9,830例(46.3%)がPPIを、1万1,384例(53.7%)がH2ブロッカーを、術後間もなく投与開始されていた。

 主要評価項目は、診断コードが付いた術後肺炎の発生とした。

PPI群の相対リスク1.19、1,000患者当たり8.2例増大

 入院期間中の術後肺炎の発生は、PPI群5.0%(492/9,830例)、H2ブロッカー群4.3%(487/1万1,384例)であった。

 傾向スコア(患者特性)補正後も、PPI群の術後肺炎発生リスクはH2ブロッカー群よりも高率のままだった(相対リスク:1.19、95%信頼区間[CI]:1.03~1.38)。

 また、操作変数(病院がどちらの薬を好んでいるか)について補正解析後、PPI使用はH2ブロッカー使用と比べて、1,000患者当たり8.2例(95%CI:0.5~15.9)の術後肺炎リスク増大と関連していた。

 著者は、「ストレス潰瘍予防目的のPPI使用は、H2ブロッカー使用と比べて術後肺炎リスクがやや高い。同リスクは、さまざまな方法による交絡因子で補正後も変わらなかった」とまとめている。

専門家はこう見る

コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員