進行膵がんのnab-PTX+GEM療法、新たな標準治療のエビデンス/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2013/11/06

 

 局所進行・転移性膵腺がんの1次治療において、ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル(ナブパクリタキセル、nab-PTX)+ゲムシタビン(GEM)併用療法は、GEM単独療法に比べ高い有効性をもたらすことが、米国・Translational Genomics Research InstituteのDaniel D. Von Hoff氏らの検討で示された。GEMは、1997年以降、切除不能な局所進行・転移性膵がんの1次治療の標準治療とされている。この間に、多くの薬剤が第2相試験で有望な結果を示したが、第3相試験で生存期間の有意な改善効果を達成したのはGEM+エルロチニブと、オキサリプラチン+イリノテカン+フルオロウラシル+ロイコボリン(FOLFIRINOX)だけであった。nab-PTX+GEM併用療法は、第1/2相試験で転移性膵がんに対する実質的な臨床効果が確認されていた。NEJM誌オンライン版2013年10月16日号掲載の報告。

nab-PTX+GEM併用療法の効果を評価
 研究グループは、切除不能局所進行・転移性膵がんの1次治療におけるnab-PTX+GEM併用療法とGEM単独療法の有用性を比較する無作為化第III相試験を実施した。対象は、年齢18歳以上、全身状態(PS)がKarnofskyスコア≧70で、前化学療法を受けていない局所進行・転移性膵がん患者であった。

 初回コースは、nab-PTX+GEM併用群がnab-PTX 125mg/m2(体表面積当たり、30~40分で静脈内投与)+GEM 1,000mg/m2(静脈内投与)を第1、8、15、29、36、43日に投与し、GEM単独群はGEM 1,000mg/m2を週1回、8週中7週に投与した。2コース目以降は両群とも、4週を1コースとして第1、8、15日に投与した。

 治療は、病態進行(PD)または許容されない有害事象が発現するまで継続され、per-protocol解析およびクロスオーバーは不可とした。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)であった。

OS中央値はnab-PTX併用群が8.5ヵ月でGEM単独群は6.7ヵ月
 2009年5月~2012年4月までに、北米、欧州、オーストラリアの11ヵ国151施設から861例が登録され、nab-PTX併用群に431例(年齢中央値62歳、女性43%)が、GEM単独群には430例(63歳、40%)が割り付けられ、それぞれ421例、402例が実際に治療を受けた。

 OS中央値はnab-PTX併用群が8.5ヵ月と、GEM単独群の6.7ヵ月に比べ有意に延長した(死亡のハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.62~0.83、log-rank検定のp<0.001)。1年生存率はnab-PTX併用群が35%、GEM単独群は22%で、2年生存率はそれぞれ9%、4%であった。

 両群の生存曲線は治療開始から1.8ヵ月後には分離し始め、生存率25%時の生存期間中央値はnab-PTX併用群が14.8ヵ月と、GEM単独群の11.4ヵ月に比べ3.4ヵ月の延長が認められた。

 独立審査委員会判定によるPFS中央値は、nab-PTX併用群が5.5ヵ月、GEM単独群は3.7ヵ月(HR:0.69、95%CI:0.58~0.82、log-rank検定:p<0.001)、ORRはそれぞれ23%、7%(p<0.001)であり、いずれも有意な差が認められた。病勢コントロール率(CR+PR+16週以上持続するSD)はそれぞれ48%、33%(p<0.001)であった。

nab-PTXをGEMと併用するとGEM単独に比べ有意に改善
 OS、PFSに関する事前に規定されたサブグループ解析では、ほとんどのサブグループにおいてnab-PTX併用群がGEM単独群よりも良好であった。

 最も頻度の高いGrade 3以上の有害事象は、好中球減少(nab-PTX併用群:38%、GEM単独群:27%)、疲労(17%、7%)、末梢神経障害(17%、1%)であった。発熱性好中球減少はnab-PTX併用群の3%、GEM単独群の1%にみられた。nab-PTX併用群におけるGrade 3以上の末梢神経障害は、いずれも29日(中央値)後までにはGrade 1以下に改善した。

 著者は、「nab-PTXをGEMと併用することで、GEM単独に比べOS、PFS、ORRが有意に改善した。nab-PTX併用により末梢神経障害や骨髄抑制の頻度が上昇したが、いずれも回復した」とまとめ、「併用群では、nab-PTXの追加によりGEMの累積投与量が増加し、治療期間の延長や総投与量の増加が達成されたことが、高い有効性をもたらしたと考えられる」と考察している。

(医学ライター 菅野 守)