急性心不全で腎機能障害を有する患者に対し、利尿療法に低用量ドパミン(商品名:イノバンほか)または低用量のBNP製剤ネシリチド(国内未承認)のいずれの追加療法を行っても、利尿療法単独の場合と比べて、うっ血除去の強化および腎機能改善への有意な効果は示されなかったことが報告された。米国・メイヨークリニックのHorng H. Chen氏らによる大規模な多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「ROSE」からの報告で、先行研究の小規模試験では、いずれもアウトカム改善の可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。
低用量ドパミン群と低用量ネシリチド群に急性心不全患者360例を割り付け
ROSE(Renal Optimization Strategies Evaluation)試験は、プラセボ(利尿療法単独)と比較として、(1)利尿療法+低用量ドパミン(2μg/kg/分)、(2)利尿療法+低用量ネシリチド(0.005μg/kg/分、ボーラスなし)の2つの治療戦略がそれぞれ、腎機能障害を有する急性心不全患者のうっ血除去を強化する可能性、および腎機能を改善する可能性があるとの仮説を検証することを目的とするものであった。
2010年9月~2013年3月に北米26地点で被験者を登録し、急性心不全で入院し腎機能障害(15~60mL/分/1.73m2)が認められた360例を、入院から24時間以内に無作為化した。被験者は非盲検下に1対1の割合で、低用量ドパミン治療戦略群と低用量ネシリチド治療戦略群に割り付けられ、さらに各群患者は無作為二重盲検下に2対1の割合で、実薬治療群とプラセボ群に割り付けられた。
主要エンドポイントは、72時間累積尿量(うっ血除去のエンドポイント)、登録から72時間までの血清シスタチンC値の変化(腎機能のエンドポイント)などを含んだ複合とした。
低用量ドパミン群も低用量ネシリチド群も有意な効果はみられず
低用量ドパミン群122例、低用量ネシリチド群119例を、プールプラセボ群119例と比較した。
結果、プラセボと比較して、低用量ドパミン追加投与の、72時間累積尿量に関する有意な効果はみられなかった。同値は低用量ドパミン群8,524mL(95%信頼区間[CI]:7,917~9,131)vs. プラセボ群8,296mL(同:7,762~8,830)で、両群差は229mL(同:-714~1,171)だった(p=0.59)。
また、血清シスタチンC値の変化に関する有意な効果もみられなかった。同値は低用量ドパミン群0.12mg/L(95%CI:0.06~0.18)vs. プラセボ群0.11mg/L(同:0.06~0.16)で、両群差は0.01mg/L(同:-0.08~0.10)だった(p=0.72)。
同様に、低用量ネシリチド追加投与についても、両エンドポイントに関する有意な効果がみられなかった。72時間累積尿量は、低用量ネシリチド群8,574mL(95%CI:8,014~9,134)vs. プラセボ群8,296mL(同:7,762~8,830)で、両群差は279mL(同:-618~1,176)だった(p=0.49)。血清シスタチンC値の変化は、低用量ネシリチド群0.07mg/L(同:0.01~0.13)vs. プラセボ群0.11mg/L(同:0.06~0.16)で、両群差は-0.04mg/L(同:-0.13~0.05)だった(p=0.36)。
副次エンドポイント(うっ血除去、腎機能あるいは臨床的アウトカムに関する)についても、低用量ドパミン群と低用量ネシリチド群の効果を示すものは認められなかった。