慢性歯周炎を有する2型糖尿病患者について、慢性歯周炎の非外科的治療を行っても、HbA1c値の改善は認められないことが、米国・ニューヨーク大学歯学部のSteven P. Engebretson氏らが、患者500例超について行った無作為化比較試験の結果、明らかにされた。慢性歯周炎は糖尿病患者において広く認められる。これまで限定的ではあるが、歯周炎を治療することで血糖コントロールが改善する可能性があることが示唆されていた。JAMA誌2013年12月18日号掲載の報告より。
歯石取りやルートプレーニングなどを行い、非治療群と比較
Engebretson氏らは2009年11月~2012年3月にかけて、慢性歯周炎が認められるが未治療であり、HbA1c値が7%以上9%未満の2型糖尿病患者、合わせて514例について試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方の群(257例)にはベースライン時に歯石取りとルートプレーニング、抗菌薬(クロルヘキシジン含嗽剤)による洗口を行い、その後3、6ヵ月時点で歯周治療支持療法(SPT)を行った。もう一方の群(257例)は対照群として歯周病の治療は行わなかった。
主要アウトカムは、6ヵ月後のHbA1c値の変化だった。副次的アウトカムは、歯周ポケットの深さやアタッチメントロス(歯肉上皮とセメント質の付着喪失)などだった。
6ヵ月後のHbA1c値は両群で有意差なし
その結果、6ヵ月後のHbA1c値は治療群が平均0.17%増加(標準偏差:1.0)、非治療群は同0.11%増加(同:1.0)と、線形回帰モデルによる補正後、両群で有意な格差は認められなかった(格差平均:-0.05%、95%信頼区間:-0.23~0.12、p=0.55)。そのため試験は、予定より早期に中止となった。
一方、歯周炎に関する臨床的測定値は、治療群が非治療群に比べ有意に改善した。両群格差の平均値は、歯周ポケットの深さが0.28mm(同:0.18~0.37)、アタッチメントロスは0.25mm(同:0.14~0.36)、プロービング時の出血は13.1%(同:8.1~18.1%)、歯肉炎指数は0.27(同:0.17~0.37)だった(いずれもp<0.001)。
著者は、非外科的歯周炎治療は、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善しなかったものの、歯周炎の進行を抑制したと述べ、「糖尿病患者において、HbA1c値低下を目的とした非外科的歯周炎治療は支持しない」と結論している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)