診療時間外に受診した急性心筋梗塞(AMI)患者は、時間内受診患者に比べて短期的な死亡率が高く、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者は病院到着から初回バルーン拡張までの時間(door to balloon time)が延長することが、米国・メイヨークリニック予防医学フェロー・反田 篤志氏らが行ったメタ解析で示された。週末や夜間などの診療時間外に受診したAMI患者は、死亡率が高くなる可能性が指摘されている。時間外診療の場合、エビデンスに基づく治療や適切な再灌流療法が行われにくくなり、病院スタッフの数や専門性の問題で治療の質を保持するのが困難になることが一因だという。BMJ誌オンライン版2014年1月21日号掲載の報告。
時間外受診と死亡の関連をメタ解析で評価
研究グループは、AMI患者の時間外受診と、door to balloon timeおよび死亡との関連を評価するために、関連文献の系統的レビューとメタ解析を実施した。
複数のデータベースを検索し、2013年4月までに公表された、医療機関の受診時間と死亡、door to balloon timeとの関連を評価した関連文献を選定した。
患者背景およびアウトカムの関連データを抽出し、試験の質はNewcastle-Ottawaスケールで評価した。異質性(heterogeneity)の評価にはCochraneのQ統計量とI
2を用いた。
死亡率の差が大きくなる傾向に
日本の1試験(STEMI患者1,974例)を含む48試験に登録された189万6,859例がメタ解析の対象となった。36試験(189万2,424例)がAMI患者の死亡アウトカムを、30試験(7万534例)がSTEMI患者のdoor to balloon timeを報告していた。
時間外受診患者は、院内または30日以内の死亡率が有意に高かった(オッズ比[OR]:1.06、95%信頼区間:1.04~1.09)。時間外受診したSTEMI患者は、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の90分以内施行率が有意に低く(OR:0.40、95%CI:0.35~0.45)、door to balloon timeが14.8分長かった。
サブグループ解析では、STEMI患者(vs. 非STEMI、p<0.01)および北米以外の国(vs. 北米、p<0.01)は、時間外受診AMI患者の院内または30日死亡率が高かった。最近は、診療時間外受診と時間内受診で死亡率の差が大きくなる傾向が認められた(p=0.03)。
これらの結果を踏まえ、著者は「受診の時間帯の違いに起因するアウトカムの差を明らかにし、治療の質を適切に評価するには、標準化30日死亡リスクなど、value-based purchasing(医療の質に応じて報酬を付与するシステム)に基づく医療機関の能力評価が必要かもしれない」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)