合併症を有する高齢の慢性リンパ球性白血病(CLL)再発例の治療において、イデラリシブ+リツキシマブ(商品名:リツキサン)療法はリツキシマブ単独療法に比べ有効性が高く、安全性プロフィールは許容できるものであることが、米国・ワイルコーネル医科大学のRichard R Furman氏らの検討で示された。臨床的に重大な合併症を有する再発CLL例は標準的な化学療法が施行不能な場合が多いため、安全性プロフィールが許容可能で、かつ有効な治療法が求められている。イデラリシブは低分子量の選択的PI3Kδ阻害薬であり、再発・難治性CLLを対象とした第I相試験において単剤もしくはリツキシマブなどとの併用で許容しうる毒性の範囲内で有意な臨床効果が確かめられている。NEJM誌オンライン版2014年1月22日号掲載の報告。
上乗せ効果をプラセボ対照無作為化試験で評価
研究グループは、再発CLLの治療におけるイデラリシブのリツキシマブへの上乗せ効果の評価を目的とする多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。対象は、腎機能低下、前治療による骨髄抑制、重篤な合併症がみられる再発CLL患者で、イデラリシブ(150mg、1日2回、経口投与)+リツキシマブまたはプラセボ+リツキシマブを投与する群に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。本試験は、事前に計画された初回中間解析においてイデラリシブ群で顕著な効果が確認されたため、データ・安全性モニタリング委員会の勧告で早期中止となった。
PFSとともに、奏効率、OSも有意に改善
2012年5月~2013年8月までに220例が登録された。78%が65歳以上で、40%が中等度以上の腎機能障害(クレアチニンクリアランス<60mL/分)を有し、35%が骨髄機能不良(Grade 3以上の貧血、血小板減少、好中球減少)、85%が累積疾患評価尺度(Cumulative Illness Rating Scale; CIRS)のスコアが6点以上であった。イデラリシブ群に110例、プラセボ群にも110例が割り付けられた。
PFS中央値は、イデラリシブ群が未到達、プラセボ群は5.5ヵ月であり、病勢進行または死亡のハザード比は0.15(p<0.001)と、イデラリシブの追加により85%の改善が得られた。奏効率はイデラリシブ群が81%、プラセボ群は13%(死亡のオッズ比:29.92、p<0.001)、1年全生存率(OS)はそれぞれ92%、80%(死亡のハザード比:0.28、p=0.02)であり、いずれもイデラリシブ群で顕著に良好であった。
有害事象は、強力な前治療を受けた再発CLL患者で予測されたものとほぼ一致した。重篤な有害事象の発現率は、イデラリシブ群が40%、プラセボ群は35%であった。
著者は、「標準的化学療法が施行できない可能性が高い再発CLL患者の治療において、イデラリシブ+リツキシマブ療法は、リツキシマブ単独療法に比べ、PFS、奏効率、OSを有意に改善した」とまとめ、「イデラリシブは、イブルチニブ(ブルトン型チロシンキナーゼ[BTK]阻害薬)やABT-199(B細胞リンパ腫2[BCL2]蛋白阻害薬)などと共にCLLに有効な薬剤のリストに加えられる。これらの薬剤をより効果的に使用するには、さらなる検討を要する」と指摘している。
(菅野守:医学ライター)