英国・グラスゴー大学のJoel W Hotchkiss氏らは、2000~2010年のスコットランドにおける冠動脈性心疾患(CHD)死亡の傾向について分析した。その結果、同期間にCHD死亡は約半減(43%減)しており、背景要因として薬物療法の選択肢が増大したこと、その有益性をスコットランド国民保健サービス(NHS)が社会経済的階級を問わず公正に供給したことがあったと思われたことを報告した。一方で、血圧やその他リスク因子の低下による、かなりの寄与は、肥満や糖尿病の有害性で減弱していたことも判明した。著者は、「次の10年におけるCHD死亡減少と不公正性の解消を図るために、付加的な広域集団への介入を急がなければならない」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年2月6日号掲載の報告より。
IMPACTモデルを用いて、CHD死亡低下の要因を定量化
分析は、スコットランドにおけるCHD死亡に対する予防および治療の寄与を定量化することを目的とし、IMPACT
SECモデルを用いて後ろ向きに行った。IMPACTモデルは、曝露リスク因子と取り入れた治療の経時的変化の寄与を定量化することで、CHD死亡低下の要因を示すことができるよう著者らが開発したものである。同モデルを用いて、9つの非オーバーラップ患者群の中で最近のCHD死亡低下を、主要心血管リスク因子の変化および40以上の治療の増大へと割り当てるように設計された。
被験者は、スコットランドの25歳超成人で、性別、年齢群、社会経済的指数(Scottish Index of Multiple Deprivation)で5群に層別化した。主要評価項目は、予防または延期された死亡であった。
収縮期血圧の低下の寄与は37%、コレステロールや禁煙の寄与が意外に小さい
結果、2010年のCHD死亡は、2000年当時の死亡率が持続した場合に起こりえた件数より5,770件少ない発生であった(予測1万3,813件に対し観察されたのは8,042件)。これはCHD死亡率で約43%(95%信頼区間[CI]:33~61%)の低下(10万当たり262から148に)を示した。低下は治療の改善によるものであり、このベネフィットは5群の階層群全体に平等に認められた。
治療の寄与が顕著であったのは、高コレステロール血症(13%)の一次予防、二次的予防薬(11%)、慢性狭心症治療(7%)であった。
死亡率低下におけるリスク因子の改善の寄与は、約39%(95%CI:28~49%)(5群中最高位群では36%、最低位群では44%であった)。
社会経済的背景を考慮せずに評価した収縮期血圧の低下の寄与は、死亡率低下の3分の1以上(37%)であった。総コレステロール(9%)、喫煙(4%)、運動不足(2%)の改善からの寄与はいずれもわずかであった。加えて、肥満と糖尿病の増大が、これらのベネフィットの一部を相殺し、それぞれ潜在的に4%、8%の死亡率増加をもたらしていた。また糖尿病の死亡増大の寄与には、社会経済的背景により格差があること(5群中最高位群では5%増大、最低位群では12%増大)が示された。
(武藤まき:医療ライター)