早期の緩和療法、進行がん患者の終末期の満足度を改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2014/03/03

 

 進行がん患者に対する早期の緩和療法による介入は、がん治療のみの場合に比べ全般的にQOLや患者満足度を改善する傾向がみられることが、カナダ・トロント大学のCamilla Zimmermann氏らの検討で示された。進行がん患者はQOLが低下し、終末期に向かって増悪する傾向がみられる。従来のがん緩和医療の観点からは、がん治療と緩和治療の共同介入は最終末期に限定されていたが、最近は早期の総合的な介入によりQOLや患者満足度の改善がもたらされる可能性が示唆されている。Lancet誌オンライン版2014年2月19日号掲載の報告。

早期介入が患者QOLに及ぼす影響をクラスター無作為化で評価
 本研究は、進行がん患者のQOLに及ぼす有効性を評価するクラスター無作為化対照比較試験であり、2006年12月1日~2011年2月28日にカナダ・トロント市のプリンセス・マーガレットがんセンターの研究グループによって実施された。

 24の腫瘍内科クリニックが、その規模および腫瘍部位(肺、消化管、泌尿生殖器、乳房、婦人科)で層別化のうえ、標準的ながん治療に加え緩和治療チームによる月1回以上のコンサルテーションとフォローアップを行う群(介入群)または標準的ながん治療のみを行う群(対照群)に1対1の割合で割り付けられた。対象は、全身状態(PS ECOG)が0~2で、6~24ヵ月の臨床予後が期待される進行固形がんの外来患者であった。

 主要評価項目は、ベースラインから3ヵ月後までの慢性疾患療法機能評価の精神的満足度(FACIT-Sp、スコアが高いほど良好)スケールの変化とした。副次評価項目は、4ヵ月後のFACIT-Spおよび3、4ヵ月後の終末期QOL(QUAL-E、スコアが高いほど良好)、症状の重症度(ESAS、スコアが高いほど不良)、治療満足度(FAMCARE-P16、スコアが高いほど良好)、患者-医療者間の相互関係の問題(CARES-MIS、スコアが高いほど不良)などであった。

QUAL-EとFAMCARE-P16は、3、4ヵ月後にいずれも有意に改善
 各群に12施設ずつが割り付けられ、461例(介入群228例、対照群233例)が登録された。患者背景は、介入群が平均年齢61.2歳、女性59.6%、積極的化学療法を受けていたのは76.3%で、対照群はそれぞれ60.2歳、53.6%、78.1%であり、対照群で泌尿生殖器がんが多かった(11.8 vs 21.9%)以外は両群間に差はなかった。このうち393例(192例、201例)が評価可能であった。

 3ヵ月後の両群間のFACIT-Spスコアの変化の差は3.56ポイント(95%信頼区間[CI]:-0.27~7.40、p=0.07)であり、有意差は認めなかった。3ヵ月後のQUAL-Eスコアの差は2.25ポイント(同:0.01~4.49、p=0.05)、FAMCARE-P16スコアの差は3.79ポイント(同:1.74~5.85、p=0.0003)で、いずれも介入群で有意に良好であったが、ESAS(群間差:-1.70、95%CI:-5.26~1.87、p=0.33)およびCARES-MIS(同:-0.66、-2.25~0.94、p=0.40)には差はみられなかった。

 4ヵ月後は、FACIT-Sp(スコアの変化の群間差:6.44ポイント、95%CI:2.13~10.76、p=0.006)、QUAL-E(同:3.51ポイント、1.33~5.68、p=0.003)、ESAS(同:-4.41ポイント、-8.76~-0.06、p=0.05)、FAMCARE-P16(同:6.00ポイント、3.94~8.05、p<0.0001)はいずれも介入群で有意に優れており、CARES-MIS(同:-0.84ポイント、-1.91~0.22、p=0.11)は介入群で良好な傾向を認めたものの有意差はなかった。

 著者は、「主要評価項目である3ヵ月後のFACIT-Spスコアに基づくQOLには有意な改善効果はみられなかったものの、全般的に進行がん患者に対する早期緩和療法の有効性を支持する有望な知見が得られた。現在、コスト解析を進めており、医療経済的側面からの意義も確立されるだろう」としている。

(菅野守:医学ライター)