心筋症で軽症心不全、左室機能不全を有する患者への、両心室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の早期介入による長期生存ベネフィットは、左脚ブロックを有する患者において有意であることが明らかにされた。米国・ロチェスター大学医療センターのIlan Goldenberg氏らが、心臓再同期療法による多施設共同自動除細動器埋め込み試験(MADIT-CRT)の参加者を長期(7年)追跡した結果、報告した。MADIT-CRTの評価(2.4年)では、CRT-Dの早期介入は植込み型除細動器(ICD)単独群と比較して左脚ブロック患者における心不全イベントを有意に抑制したことが報告されていた。NEJM誌オンライン版2014年3月30日号掲載の報告より。
MADIT-CRTの中央値2.4年追跡後、中央値5.6年追跡を延長し評価
研究グループは、CRT-D早期介入vs. ICD単独を検討したMADIT-CRT被験者の追跡を延長し、CRT-Dの長期生存ベネフィットを評価する検討を行った。
MADIT-CRTは、2004年12月22日~2009年6月22日に行われ、米国88施設から1,271例、欧州・イスラエル・カナダの24施設から549例の合計1,820例が登録されて行われた無作為化試験だった。被験者は、虚血性(NYHA心機能分類IまたはII)/非虚血性心筋症で、LVEF 30%未満、QRS幅130msec以上、またICD治療ガイドライン適格の患者であった。
試験終了後、1,691例の生存患者について2010年9月10日まで追跡を延長し(第1相)、さらに同日以降854例を追跡し2013年9月時点で評価した(第2相)。
追跡期間はMADIT-CRTが中央値2.4年、試験後追跡延長期間の中央値は5.6年だった。全分析報告は、intention-to-treatをベースに行われた。
左脚ブロックCRT-D群の累積全死因死亡ハザード比は0.59
最初の登録時から追跡7年時点において、累積全死因死亡は、CRT-Dを受けた左脚ブロックのある患者で有意に低かった。同患者の同死亡率は18%であったのに対し、ICDを受けた患者では29%であり、左脚ブロックCRT-D群の補正後ハザード比は、0.59(95%信頼区間[CI]:0.43~0.80、p<0.001)だった。
また、左脚ブロックCRT-D患者の長期生存ベネフィットは、性別や心筋症の原因、QRS幅の違いによる有意差はみられなかった。
一方、非左脚ブロック患者では、CRT-Dを受けたことによる長期生存ベネフィットが認められないばかりか、有害である可能性も示唆された。非左脚ブロックCRT-D群の補正後ハザード比は、1.57(95%CI:1.03~2.39、p=0.04)だった(QRS幅の所見による治療の相互作用p<0.001)。
(武藤まき:医療ライター)