運動は強度よりも持続性が、障害発生・進行リスクの抑制に寄与することが明らかにされた。米国・ノースウェスタン大学のDorothy D Dunlop氏らが、変形性膝関節症に罹患しているかそのリスク因子を有している、49歳以上の地域住民1,680例を前向きに追跡したコホート研究の結果、報告した。運動は、身体的能力の衰えを含む健康アウトカムの改善に有用な、低コストのアプローチであることは知られている。身体活動ガイドラインなどでは、中強度の運動を推奨しているが、その強度が障害抑制に必要なのかどうかは不明であった。BMJ誌オンライン版2014年4月29日号掲載の報告より。
膝に問題を抱える49歳以上の4地域の住民1,680例を2年間追跡
研究は2008年9月~2012年12月にかけて、米国内の複数地点(メリーランド州ボルチモア、オハイオ州コロンバス、ペンシルベニア州ピッツバーグ、ロードアイランド州ポータケット)で行われた多地点前向きコホート研究だった。客観的に測定した軽い運動をして過ごした時間が、障害発生と関連しているか、また障害の進行と関連しているかを検討した。
運動は加速度計で測定し、障害についてはベースライン時と2年時点でみた手段的および基本的日常生活動作(ADL)の制限により確認した。
主要アウトカムは、障害の発生とした。副次アウトカムは、ベースライン時と比較した2年時点の評価値(制限なし、手段的ADLのみ制限あり、基本的ADL制限が1~2、基本的ADL制限が3以上)で確認した障害の進行とした。
軽度でも日々の運動時間が長い人ほど障害発生・進行リスクが低い
ベースライン時で障害がみられず2年間の追跡を完了した被験者(49~83歳)は1,680例だった。そのうち2年間で障害発生がみられたのは149例だった。同コホートでは座りきりでない時間の平均時間は1日302分、運動時間は284分であり、運動強度は低い人が大半を占めていた。
2年間追跡の結果、同コホートにおいて、ベースライン時に過ごした軽度運動の時間と障害発生とに、有意な逆相関の関連が認められた。軽度運動の時間が長い人(四分位範囲で高い人)ほど、障害発生および障害進行のいずれもが有意に低かった。障害発生ハザード比[HR]は、社会経済的要因(年齢、性別、人種、教育、所得)と健康因子(併存疾患、うつ症状、肥満、喫煙、四肢の疼痛および機能が低いこと、膝の評価)で補正後では、対照と比べて、軽度運動時間の四分位範囲の低い群から順に1.00、0.62、0.47、0.58だった(傾向のp=0.007)。障害進行のHRは同じく、1.00、0.59、0.50、0.53だった(傾向のp=0.003)。
これらの関連性は、中強度の運動をして過ごした時間とは関連していなかった。
以上を踏まえて著者は、「今回の前向き研究データから、毎日の軽度の運動時間を増やすことが、変形性膝関節症に罹患しているまたはリスクを有している人の障害発生および進行を抑制することが示された。毎日の運動時間を増やすことが障害リスクの低下に結びつくことになる。運動強度は増やさなくともよいようだ」とまとめている。
(武藤まき:医療ライター)