米国・イェール大学医学大学院のAli R. Keramati氏らは、メタボリックシンドロームの遺伝形質と関連する遺伝子を特定したことを発表した。これまでも遺伝子解析により、個別の心血管リスク因子に関して、原因となる突然変異遺伝子の特定には成功していた。しかし、メタボリックシンドロームのような心血管リスクの遺伝形質が集約した感受性遺伝子のマッピングは限定的なものであったという。NEJM誌2014年5月15日号掲載の報告。
3家族について、共通した疾患を特定し、DNAサンプルで遺伝子解析
研究グループは、3つの大家族について、冠動脈疾患若年発症、中心性肥満、高血圧、糖尿病を発症した家族員を同定し、疾患の原因となる遺伝子を、連鎖解析と全エクソーム配列決定を行い同定した。
3家族は、イラン南西部に住み特異的な若年発症の中心性肥満がみられた。家族1は5世代42例、家族2は4世代34例、家族3は5世代36例だった。DNAサンプルは21例の生存家族員から得られ、そのうち14例は画像診断で冠動脈疾患若年発症が診断されていた。5例は非家族員で、2例は中心性肥満、高血圧、糖尿病を有していたが、冠動脈疾患に関する状態は不明であった。またこのほかに、DNAサンプルは、民族性で適合させた2,000例を集めて行われた。
DYRK1Bでの突然変異が発端であることが判明
臨床的特徴を有していた3家族の家族員は、全疾患がみられた(共遺伝)家族員25例、規定した疾患がみられなかったり非血縁であった家族員12例、メタボリックシンドロームの臨床的特徴を有するが冠動脈疾患に関する状態は不明であった2例に分類できた。共遺伝家族員25例は全員、心筋梗塞および冠動脈疾患の若年発症がみられた(男性44.8±2.6歳、女性44.2±1.8歳)。
遺伝解析の結果、創始者における
DYRK1Bでの突然変異が同定された。この突然変異は、共遺伝家族員全員が正確に臨床症状とともに受け継いでおり、非家族員は有していなかった。
疾患遺伝子の機能特性分析からは、
DYRK1Bにコードされている非変異蛋白が、SHH(ソニックヘッジホッグ)シグナル伝達経路およびWntシグナル伝達経路を阻害し、脂肪生成を増強していることが明らかになった。さらに、
DYRK1Bは、キーとなる糖新生酵素グルコース-6-ホスファターゼの発現を促進していることも判明した。これらの作用をR102Cアレルが増強し、活性機能が獲得されることも示された。
この
DYRK1B R102Cアレルの有無について、冠動脈疾患と複数のメタボリックシンドロームを有する白人患者300例を対象にスクリーニングをした結果、5例の患者で新たなアレル(H90P)の特定に結びついた。さらに、突然変異キャリアの家族員から入手したDNAサンプルを評価した結果、この新たなアレルが、メタボリックシンドロームの常染色体優性パターンの特色とともに一貫して分離されたことが示された。
これらの結果を踏まえて著者は、「脂肪生成と糖代謝恒常性における
DYRK1Bの役割、およびその機能変異がメタボリックシンドロームの遺伝的形質と関連していることが示された」とまとめている。