成人喘息患者に対するビタミンD3の投与は、ステップ1の吸入ステロイド薬治療の失敗や増悪を改善しなかったことが、米国・ワシントン大学のMario Castro氏らが行った無作為化試験VIDAの結果、示された。著者は「症候性の喘息患者に対するビタミンD3投与の治療戦略について、裏づけは得られなかった」とまとめている。喘息などの疾患において、ビタミンD不足と有害転帰との関連が示唆されている。しかし、経口ビタミンD3の摂取により、吸入ステロイド薬治療を受けているビタミンD不足の喘息患者のアウトカムが改善するかについては、明らかではなかった。JAMA誌2014年5月28日号掲載の報告より。
全米9施設で、プラセボ対照試験
VIDA(Vitamin D Add-on Therapy Enhances Corticosteroid Responsiveness in Asthma)試験は、症候性喘息で、血清25ヒドロキシビタミンD値が30ng/mL未満であった成人患者を対象に、全米9施設[米国国立心肺血液研究所(NHLBI)喘息ネット関連の大学病院]で行われた無作為化二重盲検並行群間プラセボ対照試験。2011年4月から被験者の登録を開始し、吸入ステロイド薬など現行治療に関するrun-in期間後、408例が無作為化を受け、フォローアップは2014年1月に完了した。
無作為化された被験者は、吸入ステロイド薬のシクレソニド(商品名:オルベスコ)(320mg/日)+経口ビタミンD
3(10万IUを1回、その後4,000 IU/日を28週間投与、201例)またはプラセボ(207例)の投与を受けた。
試験開始から12週時点で喘息コントロールを達成した患者は、シクレソニドを160mg/日とし8週間、その後もコントロールが維持された場合は80mg/日8週間に漸減した。
主要アウトカムは、喘息治療失敗初発までの期間で、肺機能低下、
β2刺激薬や全身性ステロイド薬の投与、救急受診や入院で判定した。また、副次アウトカムには、増悪ほか14のアウトカムが事前に規定されていた。
初回治療失敗率のハザード比は0.9、増悪は0.7
結果、28週間のビタミンD
3治療は、初回治療失敗率を改善しなかった。ビタミンD
3群28%(95%信頼区間[CI]:21~34%)、プラセボ群29%(同:23~35%)で、補正後ハザード比(HR)は0.9(同:0.6~1.3、p=0.54)であった。
副次アウトカムは9つの指標について分析した。そのうち増悪について、有意差はみられなかった(13%vs. 19%、HR:0.7、95%CI:0.4~1.2、p=0.21)。
唯一統計的有意差がみられたのは、コントロール維持のためのシクレソニドの全体投与量についてであり、ビタミンD
3群111.3mg/日(95%CI:102.2~120.4mg/日)、プラセボ群126.2mg/日(同:117.2~135.3mg/日)で、両群差は14.9mg/日(同:2.1~27.7mg/日)とわずかであった。
(医療ライター:朝田哲明)