慢性腎臓病(CKD)の進行エンドポイントとして、推定糸球体濾過量(eGFR)の小幅な低下(たとえば2年間で30%低下)が有用であることが、米国ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院のJosef Coresh氏らにより明らかにされた。CKDの進行エンドポイントとしては、末期腎不全(ESRD)または血清クレアチニン値の倍増(eGFRの57%低下に相当)が確立しているが、いずれも末期のイベントである。今回の検討で、eGFRの小幅な低下はクレアチニン値の倍増よりも発生頻度が高く、その後のESRDや死亡リスクと強固に関連していたことが明らかにされた。JAMA誌オンライン版2014年6月3日号掲載の報告より。
170万例のデータからeGFR低下とESRD、死亡との関連を分析
研究グループは、CKD Prognosis Consortiumの35コホート・170万例の個人データを用いたメタ解析にて、eGFR低下とその後のESRDへの進行との関連を特徴づけることで、eGFR低下がCKD進行の代替エンドポイントとなりうるかを調べた。また、CKD患者の大半がESRDに至る前に死亡していることから、死亡リスクとの関連についても調べた。
データには、ESRD 1万2,344例、死亡22万3,944例のアウトカムデータが、血清クレアチニン値のデータ(1~3年の間に複数回測定)とともに記録されていた。
2012年7月~2013年9月の個々の参加者データを抽出または標準化された抽出分析法によりランダムエフェクトメタ解析を行った。ベースライン時のeGFRは1975~2012年分を集めて検討した。
主要評価項目は、ESRD(透析開始か移植の実施)、または2年間のeGFRの変化率と関連した全死因死亡リスクで、交絡因子や当初のeGFRで補正を行い評価した。
ESRDと死亡のハザード比、eGFR 57%低下で32.1、同30%低下で5.4
ESRDと死亡の補正後ハザード比(HR)は、eGFR低下が大きいほど増大した。ベースライン時eGFRが60mL/分/1.73m
2未満だった被験者で、ESRD発生の補正後HRは、eGFR低下が57%の場合は32.1(95%信頼区間[CI]:22.3~46.3)、同30%低下の場合は5.4(同:4.5~6.4)であった。一方で、30%以上の低下例は、全コホートの6.9%(95%CI:6.4~7.4%)でみられ、57%の低下例0.79%(同:0.52~1.06%)と比べて頻度が高かった。
これらの関連は、ベースライン期間(1~3年)、ベースライン時eGFR、年齢、糖尿病の状態、アルブミン尿でみた場合も強く一貫していた。
ベースライン時eGFR 35mL/分/1.73m
2の患者について、ESRDの平均補正後10年リスクは、eGFR 57%低下では99%(95%CI:95~100%)、40%低下では83%(同:71~93%)、30%低下では64%(同:52~77%)、低下が0%では18%(同:15~22%)だった。
死亡リスクはそれぞれ、77%(同:71~82%)、60%(同:56~63%)、50%(同:47~52%)、32%(同:31~33%)で、ESRDと関連パターンは類似していたがやや弱かった。