4.5時間以内のrt-PAが脳卒中転帰を改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2014/08/18

 

 脳卒中発症後4.5時間以内のアルテプラーゼ(商品名:アクチバシンほか)投与は、早期の致死的頭蓋内出血リスクを増大させるが、脳卒中アウトカムの全般的な改善をもたらすことが、英国・オックスフォード大学のJonathan Emberson氏らStroke Thrombolysis Trialists’ Collaborative Groupの検討で示された。4.5時間以内であれば治療開始が早いほどベネフィットが大きいこともわかった。遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)であるアルテプラーゼは、急性虚血性脳卒中の治療に有効であるが、高齢者や脳卒中の重症度が高い患者への、発症から長時間経過後の使用については議論が続いている。Lancet誌オンライン版2014年8月6日号掲載の報告。

予後予測因子をメタ解析で評価
 研究グループは、アルテプラーゼ投与患者の良好な脳卒中アウトカムに影響を及ぼす因子(年齢、脳卒中重症度)を検討するために、急性虚血性脳卒中に対するアルテプラーゼとプラセボまたは非盲検対照薬を比較した9つの無作為化第III相試験のメタ解析を実施した。

 良好な脳卒中アウトカムは、3~6ヵ月時に機能障害がみられない場合(modified Rankin Score:0~1)と定義した。そのほか、症候性頭蓋内出血(7日以内の2型実質性出血およびSITS-MOST基準による36時間以内の2型実質性出血と定義)、7日以内の致死的頭蓋内出血、90日死亡の評価を行った。

年齢、重症度はアウトカムに影響しない
 9試験に登録された6,756例(アルテプラーゼ群3,391例、対照群3,365例)が解析の対象となった。全体の平均年齢は71歳、80歳超が26%、女性が45%であった。

 アルテプラーゼ投与により良好な脳卒中アウトカムの達成率が改善し、投与時期が早いほど、これに比例してベネフィットが大きくなった。

 すなわち、発症後3.0時間以内に投与した場合の良好なアウトカムの達成率は、アルテプラーゼ群が32.9%(259/787例)で、対照群の23.1%(176/762例)に比べ有意に高かった(オッズ比[OR]:1.75、95%信頼区間[CI]:1.35~2.27)。また、投与時期3.0~4.5時間での達成率は、アルテプラーゼ群が35.3%(485/1,375例)、対照群は30.1%(432/1,437例)と、両群とも3.0時間以内よりも改善する傾向がみられたが、有意差は保持しつつもORは小さくなった(OR:1.26、95%CI:1.05~1.51)。

 これに対し、4.5時間以降はそれぞれ32.6%(401/1,229例)、30.6%(357/1,166例)であり、有意な差はなかった(OR:1.15、95%CI:0.95~1.40)。このような投与時期が早いほどベネフィットが大きい傾向は、どの年齢や脳卒中重症度でも認められた。

 一方、アルテプラーゼ投与により症候性頭蓋内出血および致死的頭蓋内出血が有意に増加した。すなわち、2型実質性出血の発生率はアルテプラーゼ群が6.8%(231/3,391例)、対照群は1.3%(44/3,365例)(OR:5.55、95%CI:4.01~7.70、p<0.0001)、SITS-MOST基準の2型実質性出血はそれぞれ3.7%(124例)、0.6%(19例)(OR:6.67、95%CI:4.11~10.84、p<0.0001)、7日以内の致死的頭蓋内出血は2.7%(91例)、0.4%(13例)(OR:7.14、95%CI:3.98~12.79、p<0.0001)であった。

 90日死亡率は、アルテプラーゼ群が17.9%(608/3,391例)、対照群は16.5%(556/3,365例)であり、両群間に差は認めなかった(ハザード比:1.11、95%CI:0.99~1.25、p=0.07)。

 したがって、アルテプラーゼ投与により頭蓋内出血による早期死亡の絶対リスクが約2%増加したが、これは3~6ヵ月間に機能障害のない生存率が3.0時間以内投与で約10%増加し、3.0~4.5時間での投与で約5%増加したことで相殺された。

 著者は、「脳卒中発症4.5時間以内のアルテプラーゼ投与により、治療後数日内の致死的頭蓋内出血のリスクは増大したものの、年齢や脳卒中の重症度にかかわらず良好な脳卒中アウトカムの全般的な改善をもたらし、4.5時間以内であれば治療開始がより早いほどベネフィットが大きかった」とまとめ、「アルテプラーゼの投与開始の遅延による効果の減弱の程度に関する新たなエビデンスがもたらされた」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 内山 真一郎( うちやま しんいちろう ) 氏

国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授

赤坂山王メディカルセンター脳神経内科部長

J-CLEAR評議員