心拍数低下薬、心不全症状のない安定冠動脈疾患には?/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2014/09/18

 

 心不全症状を認めない安定冠動脈疾患に対し、心拍数低下薬イバブラジン(国内未承認)を標準治療に追加して投与しても、アウトカムの改善には結びつかなかったことが報告された。英国・王立ブロンプトン病院のKim Fox氏らによる、無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。これまでの検討でイバブラジンは、左室機能不全、心拍数70回/分以上の安定冠動脈疾患患者について、アウトカムを改善することが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2014年8月31日号掲載の報告より。

1万9,102例を対象に無作為化プラセボ対照試験

 試験は2009年10月12日~2012年4月30日に、51ヵ国1,139施設で行われた。被験者は、臨床的に心不全を認めない安定冠動脈疾患患者で、心拍数70/分以上の計1万9,102例だった。そのうち1万2,049例はCCS(Canadian Cardiovascular Society)スケールクラスII以上(範囲:I~IVで高いほど身体的活動度が制限される)の狭心症を有していた。

 研究グループは被験者を、標準治療に加えてプラセボ(9,552例)またはイバブラジン(上限10mgを1日2回、目標心拍数55~60回/分を達成するよう調整)を投与する群(9,550例)に無作為に割り付け追跡した。患者の最終受診日は2014年1月24日で、追跡期間中央値は27.8ヵ月だった。

 主要エンドポイントは、心血管系が原因の死亡または非致死的心筋梗塞の複合とした。

3ヵ月時点、追跡期間中央値27.8ヵ月後も有意差みられず

 3ヵ月時点の評価で、患者の平均心拍数(±SD)は、イバブラジン群60.7±9.0回/分、プラセボ群70.6±10.1回/分だった。

 追跡期間中央値27.8ヵ月後の主要エンドポイント発生は、イバブラジン群6.8%、プラセボ群6.4%で、有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:1.08、95%信頼区間[CI]:0.96~1.20、p=0.20)。エンドポイント別にみてもいずれも有意差はみられなかった。

 イバブラジンは、CCSクラスII以上の狭心症を有する患者において主要エンドポイントを増大することがみられたが、同狭心症を有さない患者では増大はみられなかった(相互作用p=0.02)。

 また徐脈の発生がイバブラジン群でプラセボ群よりも有意に高率だった(18.0%対2.3%、p<0.001)。

(武藤まき:医療ライター)

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 准教授

J-CLEAR評議員

コメンテーター : 桑島 巖( くわじま いわお ) 氏

J-CLEAR理事長

東都クリニック 高血圧専門外来