急性虚血性脳卒中患者に対し発症後6時間以内に行う動脈内治療は、機能的アウトカムに有効かつ安全であることが、オランダ・エラスムスMC大学医療センターのO.A. Berkhemer氏らによる多施設共同無作為化試験の結果、明らかにされた。対象は前方循環の頭蓋内動脈近位部閉塞による急性虚血性脳卒中患者で、標準治療とされるrt-PA静注療法の単独群との比較で機能的アウトカムへの効果が検討された。これまでに、同患者への動脈内治療は緊急的な血行再建術に非常に効果的であることは知られていたが、機能的アウトカムへの効果は立証されていなかった。NEJM誌2015年1月1日号(オンライン版2014年12月17日号)掲載の報告より。
発症後6時間以内に動脈内治療
試験はオランダ国内16施設にて、患者を標準治療単独群または標準治療+動脈内治療を行う群に無作為に割り付けて行われた。前方循環の動脈近位部閉塞を血管イメージングで確認し、発症後6時間以内に動脈内治療が可能であった患者を適格とした。
主要アウトカムは、90日時点の修正Rankinスケールスコアとし、0(症状なし)から6(死亡)のスコアを用いて機能的アウトカムを評価した。
治療効果は、順序ロジスティック回帰法を用いて推算した共通オッズ比(事前に予後因子を規定し補正)を用いて、動脈内治療のほうが標準治療単独よりも、より修正Rankinスコアが低くなるという尤度を測定して評価した。
90日時点、機能的自立患者は32.6%vs.19.1%で介入を支持する結果
500例の患者が登録され、233例が動脈内治療(介入)群に、267例が標準治療単独(対照)群に割り付けられた。被験者は平均年齢65歳(範囲:23~96歳)、男性が292例(58.4%)で、無作為化前に実施されたrt-PA治療を受けたのは445例(89.0%)であった(うち介入群は203例[87.1%])。
介入群に割り付けられた233例のうち、実際に動脈内治療(機械的血栓除去術のありなし含む)を受けたのは196例であった。そのうち機械的血栓除去術を受けたのは195例で、190例(81.5%)が血栓回収ステントを用いた介入が行われた。
結果、90日時点の評価に基づく介入群の補正後共通オッズ比は、1.67(95%信頼区間[CI]:1.21~2.30)であった。機能的に自立した患者(修正Rankスコア0~2)の割合は、介入群32.6%vs. 対照群19.1%で、介入を支持する絶対差は13.5ポイント(95%CI:5.9~21.2)であった。
なお死亡率や症候性脳内出血の発生率について、両群間で有意な差はなかった。
(武藤まき:医療ライター)