急性脳卒中の患者に対し、通常の脳卒中治療に加え第3世代セフトリアキソン(商品名:ロセフィンほか)の予防的投与を行っても、機能的アウトカムの改善にはつながらなかったことが報告された。オランダ・アムステルダム大学のWilleke F. Westendorp氏らが、同患者2,550例について行った多施設共同非盲検無作為化比較試験PASS(Preventive Antibiotics in Stroke Study)の結果、示された。著者は「今回の結果は、成人急性脳卒中患者に対する予防的抗菌薬投与を支持しないものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2015年1月19日号掲載の報告より。
セフトリアキソン2gを24時間ごとに4日間投与
研究グループは2010年7月6日~2014年3月23日にかけて、オランダ30ヵ所の医療機関で、急性脳卒中の患者2,550例を対象に試験を行った。
被験者を無作為に2群に分け、一方には、通常の脳卒中治療に加えセフトリアキソン2gを24時間ごと、4日間にわたり静注投与した。もう一方の群には、通常の脳卒中治療のみを行った。被験者の割り付けは、発症後24時間以内に行われた。
主要エンドポイントは、3ヵ月後の修正Rankinスケールによる機能的アウトカムだった。副次的評価項目は、死亡、感染症、抗菌薬使用の各発生率、入院期間などだった。
3ヵ月後の修正Rankin・スケールは同等
無作為化直後に12例が除外となり、2,538例についてintention-to-treat分析を行った(セフトリアキソン群1,268例、対照群は1,270例)。なお3ヵ月のフォローアップを完了したのは2,514例(99%、各群1,257例)だった。
結果、3ヵ月後の修正Rankinスケールは両群において同程度で、セフトリアキソンの予防的投与による機能改善は認められなかった(オッズ比:0.95、95%信頼区間:0.82~1.09、p=0.46)。
また、セフトリアキソン予防的投与による有害事象は認められなかったが、クロストリジウム・ディフィシル菌の過剰繁殖感染が、セフトリアキソン群の2例(1%未満)にのみ認められた(対照群は発生例なし)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)