心不全や急性心筋梗塞、肺炎で入院した高齢者は、退院後数ヵ月にわたり、再入院や死亡リスクが高い状態にあることが明らかにされた。初回再入院リスクが最大値から50%に減少するのは、心不全で退院後38日だった。米国・コロンビア大学医療センターのKumar Dharmarajan氏らが、メディケアに加入する米国高齢者300万人超のデータについて分析し明らかにした。結果を踏まえて著者は、「高齢患者は退院後、しばらくの間は健康に関して用心することが必要である。一方、医療提供者は、退院後高齢患者の絶対リスクや回復への軌跡に関する知識を活用することで有害転帰を軽減する介入を行うことができるだろう」とまとめている。BMJ誌オンライン版2月5日号掲載の報告より。
初回再入院と退院後1年死亡リスクの軌跡を分析
研究グループは、2008~2010年に米国内4,767ヵ所の病院に入院した65歳以上のメディケア出来高払いプラン加入者について、後ろ向きコホート試験を行った。300万人超の同プラン加入者のうち、心不全や急性心筋梗塞、肺炎で入院後、生存退院した人を対象に、退院後の入院や死亡リスクについて分析を行った。
主要評価項目は、初回再入院と退院1年後までの死亡の1日ごとの絶対リスクだった。そうしたリスクの軌跡をたどるため、再入院と死亡について、同リスクが最大値から50%まで減少するまでに要する日数などを求めた。
死亡リスクが最大値から半減、心不全11日、心筋梗塞6日、肺炎10日
その結果、退院1年後までの再入院と死亡の発生率は、心不全で入院した患者はそれぞれ67.4%と35.8%、急性心筋梗塞で49.9%と25.1%、肺炎で55.6%と31.1%だった。
初回再入院リスクが最大値から50%に減少するのは、心不全で退院後38日、急性心筋梗塞で同13日、肺炎で同25日だった。死亡については、それぞれ11日、6日、10日だった。
初回再入院リスクが最大値から95%減少したのは、心不全で45日、急性心筋梗塞で38日、肺炎で45日だった。死亡リスクについて最大値から95%減少したのは、それぞれ21日、19日、21日だった。
一方、心不全、急性心筋梗塞、肺炎で入院した人は、入院をしていない人に比べて、退院後90日間の再入院リスクはそれぞれ8倍、6倍、6倍高かった。同期間の死亡リスクについても、それぞれ11倍、8倍、10倍高かった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)