家族性高コレステロール血症を有する患者のほうが、有さない患者よりも2型糖尿病の有病率が有意に低いことが、オランダ・アムステルダム大学メディカルセンター(AMC)のJoost Besseling氏らによる検討の結果、明らかにされた。同国6万3,320例を対象とした横断研究による結果で、遺伝子変異のタイプによっても有意に異なることが判明し、著者は、「今回の知見が縦断研究でも確認されれば、2型糖尿病発症の原因として、LDL受容体を介する膜内外コレステロール輸送が関連している可能性が高まるだろう」と指摘している。JAMA誌2015年3月10日号掲載の報告より。
家族性高コレステロール血症と2型糖尿病発症の関連を断面研究
本検討は、家族性高コレステロール血症は、肝臓や膵臓など末梢細胞でのコレステロール取り込み障害によって特徴付けられること、対照的に、スタチン治療は細胞コレステロール取り込みを増大し、2型糖尿病発症リスクの増大と関連している知見が示されていたことを踏まえて行われた。これらの知見から研究グループは、膜内外コレステロール輸送が、2型糖尿病の発症に結び付くとの仮説を立て、2型糖尿病と家族性高コレステロール血症の関連を調べた。
検討は、断面研究にて、1994~2014年のオランダ全国スクリーニングプログラムに参加し、家族性高コレステロールのDNA検査を受けた6万3,320例を対象に行われた。
家族性高コレステロール血症遺伝子変異の有害性および非有害性は、文献や検査室機能検査に基づき評価した。また、LDL受容体(LDLR)遺伝子変異はアポリポ蛋白B(
APOB)遺伝子変異よりも重大であるとみなし、LDLR変異型のうち受容体陰性タイプが受容体欠損タイプよりも重大であるとみなし、2型糖尿病の有病率を主要評価項目として各関連を評価した。
家族性高コレステロール血症患者で2型糖尿病有病率が有意に低い
結果、2型糖尿病有病率は、家族性高コレステロール血症(FH)患者群は1.75%(440/2万5,137例)に対し、非FH患者群は2.93%(1,119/3万8,183例)で、FH患者群のほうが有意に低かった(オッズ比[OR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.55~0.69、p<0.001)。多変量回帰モデルを用いたFH群の補正後2型糖尿病有病率は1.44%で、両群差は1.49%、ORは0.49(95%CI:0.41~0.58)であった(p<0.001)。
また、
APOB遺伝子変異群、LDLR遺伝子変異群の補正後2型糖尿病はそれぞれ1.91%、1.33%で、非FH群と比較したORは、それぞれ0.65、0.45(いずれもp<0.001)であった。
さらにLDLR変異型別にみた2型糖尿病有病率は、受容体欠損タイプ群1.44%、受容体陰性タイプ群1.12%で、非FH群と比較したORは、それぞれ0.49、0.38(いずれもp<0.001)であった。
(武藤まき:医療ライター)