プライマリPCIを受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への、ルーチンの用手的血栓除去の実施は、180日間の心血管死や心筋梗塞の再発などの複合アウトカムを改善しなかったことが示された。一方で、30日以内の脳卒中発生率は、用手的血栓除去により約2倍増大した。カナダ・ハミルトン総合病院のS.S. Jolly氏らが、1万732例について行った無作為化試験の結果、報告した。プライマリPCI時の用手的血栓除去は遠位塞栓を抑制し、微小血管の循環を改善するとされる。先行研究の小規模試験では、血栓除去による臨床転帰の改善が示唆されたが、大規模試験では相反する結果が報告されていた。NEJM誌2015年4月9日号(オンライン版2015年3月16日号)掲載の報告より。
PCI前にルーチンの用手的血栓除去を実施
Jolly氏らは、プライマリPCIを実施予定のSTEMI患者1万732例を対象に、無作為化比較試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはPCI前にルーチンの用手的血栓除去を行い、もう一方にはPCIのみを行った。
主要アウトカムは、180日以内の心血管死、心筋梗塞の再発、心原性ショック、NYHA心機能分類IVの心不全の複合とした。主な安全性に関するアウトカムは、30日以内の脳卒中とした。
30日以内の脳卒中発生率、血栓除去群が対照群の2.06倍
その結果、主要アウトカムの発生は、血栓除去群5,033例中347例(6.9%)、対照群5,030例中351例(7.0%)と、両群で同等だった(ハザード比:0.99、95%信頼区間:0.85~1.15、p=0.86)。
心血管死も、血栓除去群3.1%、対照群3.5%と同等だった(同:0.90、0.73~1.12、p=0.34)。主要アウトカムとステント血栓症または標的血管血行再建術の発生率も、それぞれ9.9%と9.8%で、同等だった。
一方、30日以内の脳卒中発生率については、対照群0.3%(16例)に対し血栓除去群は0.7%(33例)と、約2倍増大した(ハザード比:2.06、同:1.13~3.75、p=0.02)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)