前大脳動脈近位部閉塞による急性脳卒中患者に対し、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)静注療法に加えてステント型血栓回収デバイスを用いた血栓除去術を行うことで、90日時点での機能的自立率は60%と、t-PA静注療法単独の35%と比べて大幅に改善することが示された。米国UCLA脳卒中センターのJeffrey L. Saver氏らが、196例について行った無作為化試験の結果、報告した。先行研究で、同患者へのt-PA静注療法単独では機能的自立率は40%未満と報告されており、ステント型血栓回収デバイスを用いた血栓除去術を併用した場合には再灌流率が上昇し、長期的な機能的アウトカム改善の可能性が示されていた。NEJM誌オンライン版2015年4月17日号掲載の報告より。
発症6時間以内に血栓回収デバイスによる血栓除去術
検討は適格被験者を無作為に2群に分け、一方にはt-PA静注療法に加え、発症6時間以内にステント型血栓回収デバイスを用いた血栓除去術を行った(介入群)。もう一方の群には、t-PA静注療法のみを行った(対照群)。
被験者は、前大脳動脈近位部閉塞が確認された患者であった。病変中心部に広範な不可逆的変化に陥った領域は認められなかった。
主要アウトカムは、90日時点での修正Rankinスケールによる障害重症度(スコア範囲は0:症状なし~6:死亡)だった。
修正Rankinスケールも全例で障害重症度が低下
試験は早期に有効性が確認されたため、予定よりも早く終了となった。無作為化を受けた患者は39ヵ所の医療機関で集められた196例だった(各群98例)。
介入群の画像診断特定から施術開始(鼠径部穿刺)までの時間中央値は57分、手術終了時点の再灌流率は88%に上昇していた。
結果、介入群は対照群に比べ、90日時点における修正Rankinスケールにおいて、すべての評価分野で障害重症度が低下したことが認められた(p<0.001)。機能的自立(修正Rankinスケール0~2)となった患者の割合も、対照群35%に対し介入群60%と、有意に高率だった(p<0.001)。
なお、90日死亡率については、介入群9%に対し対照群12%、症候性頭蓋内出血はそれぞれ0%と3%と、いずれも両群で有意差はなかった(それぞれ、p=0.50、p=0.12)。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)