急性虚血性脳卒中、血栓除去術の追加は有用~前向き患者登録システムでの試験/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/05/08

 

 急性期虚血性脳卒中患者に対する発症後8時間以内のステント型リトリーバー(血栓回収デバイス)を用いた血栓除去術は、脳卒中による障害の重症度を改善し、機能的自立の割合を増加させることが、米国・ピッツバーグ大学医療センターのTudor G Jovin氏らが実施したREVASCAT試験で示された。近年、機械的血栓除去療法の臨床的有効性が複数の無作為化試験によって報告されているが、脳卒中の血管内治療の試験では、間断のない連続的な患者登録が困難なことが問題とされる。その解決策として、本試験では地域住民ベースの前向き患者登録システムが用いられた。NEJM誌オンライン版2015年4月17日号掲載の報告。

標準的薬物療法への追加の効果を無作為化試験で評価
 REVASCAT試験は、急性期虚血性脳卒中の治療において、標準的な薬物療法への血栓除去術の追加の有用性を評価する無作為化第III相試験。対象は、年齢18~85歳、発症後8時間以内の前方循環近位部閉塞(画像検査で中大脳動脈M1部[主幹]の閉塞が確認され、内頸動脈閉塞を伴う場合も含む)で、広範梗塞巣のない患者であった。

 被験者は、標準的な薬物療法に加えステント型リトリーバーによる血栓除去術を行う群または標準的薬物療法のみの群(対照群)に無作為に割り付けられた。全例が、組織プラスミノーゲン活性化因子(t-PA、アルテプラーゼ)の投与で再灌流が達成されなかったか、または禁忌の患者であった。

 主要評価項目は、90日後の修正Rankinスケール(mRS、0:無症状~6:死亡)による機能障害重症度とした。なお、本試験は690例の登録を予定していたが、試験期間中に他の同様の試験で血栓除去術の有効性が確認されたため早期中止となった。

QOLも改善、死亡や頭蓋内出血に差はない
 2012年11月~2014年12月までにスペイン・カタロニア地方の4施設に206例が登録され、血栓除去術群に103例(平均年齢65.7歳、男性53.4%、t-PA投与例68.0%)、対照群にも103例(67.2歳、52.4%、77.7%)が割り付けられた。全体の発症から割り付けまでの期間中央値は225分で、血栓除去術群のうち実際に除去術が行われたのは98例だった。

 90日時点のmRSスコアの補正共通オッズ比(OR)は1.7(95%信頼区間[CI]:1.05~2.8)であり、血栓除去術群で有意に優れていた。また、90日時点の機能的自立(mRSスコア0~2:軽度の障害)の両群間の絶対差は15.5%(43.7 vs. 28.2%、補正OR:2.1、95%CI:1.1~4.0)であり、血栓除去術群で有意に良好だった。

 劇的神経学的回復(24時間後のNIH脳卒中スケール[NIHSS]の8点以上の減少または0~2点の達成)の補正ORは5.8(95%CI:3.0~11.1)であり、血栓除去術群で有意に優れた。

 さらに、90日時のNIHSS中央値の補正β係数は-2.4(95%CI:-4.1~-0.8)、Barthelインデックス(0~100点、点が高いほど日常生活動作が良好)の95~100点の達成の補正ORは4.2(95%CI:2.1~8.4)、EQ-5Dスコア(-0.33~1点、点が高いほどQOLが良好)中央値の補正β係数は0.11(95%CI:0.02~0.21)であり、いずれも血栓除去術群で有意に優れた。

 24時間後の梗塞容積中央値(16.3 vs. 38.6mL、p=0.02)も、血栓除去術群で有意に小さかった。また、血栓除去術群の再灌流達成率は中央判定で66%、担当医判定では80%だった。

 90日時点の死亡率(18.4 vs. 15.5%、p=0.60)および症候性の頭蓋内出血の発症率(1.9 vs. 1.9%、p=1.00)は、両群間に差はなかった。他の重篤な有害事象の発症率も両群間でほぼ同等だった。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 中川原 譲二( なかがわら じょうじ ) 氏

梅田脳・脊髄・神経クリニック 脳神経外科

J-CLEAR評議員