携帯GPS機能で心肺蘇生実施率が向上/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2015/06/25

 

 携帯電話使用者の位置情報を瞬時に特定する携帯電話位置情報システムを使って、救急通報があった院外心停止が疑われる患者の近くにいる心肺蘇生(CPR)訓練を受けたボランティア市民に連絡し、現場への急行を依頼することで、“居合わせた市民(バイスタンダー)によるCPR実施率”が有意に上昇したことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMattias Ringh氏らが、二重盲無作為化比較試験を行い明らかにした。バイスタンダーによるCPRは、院外心停止患者の生存率上昇と関連することが示されている。NEJM誌2015年6月11日号掲載の報告より。

携帯電話位置情報システム活用し、患者から500m以内のボランティアに連絡
 試験は2012年4月~2013年12月にかけて、ストックホルムで行われた。

 研究グループは、救急通報を受け、対象患者に院外心停止の疑いがあった場合、携帯電話位置情報システムを使い、患者の500m以内に居合わせたCPR訓練を受けた市民ボランティアの位置を特定した。

 そのうえで、介入群の患者に対しては該当するボランティアに連絡し、患者の元に急行するよう依頼した。一方で対照群の患者については、該当ボランティアに連絡をしなかった。

 主要評価項目は、救急隊や消防隊、警察が到着する以前の、バイスタンダーによるCPR実施率とした。

 CPR訓練を受けた市民ボランティアは、試験開始当初の登録人数は5,989人で、試験実施中に計9,828人に増えた。

バイスタンダーCPR実施率、介入群で62%
 試験期間中、携帯電話位置情報システム起動となった院外心停止は667件だった。介入群は46%(306例)、対照群は54%(361例)だった。

 バイスタンダーによるCPR実施率は、介入群が62%(305例中188例)であった。一方、対照群は48%(360例中172例)で、介入群のほうが有意に高率だった(絶対差:14ポイント、95%信頼区間:6~21、p<0.001)。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏

慶應義塾大学 循環器内科 准教授

J-CLEAR評議員