COPDの肺容量減少術、気管支鏡下弁留置が有用か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2015/07/08

 

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、気管支内弁を用いた気管支鏡下肺容量減少手術(BLVR)は、肺機能および6分間歩行距離を有意に改善することが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのClaire Davey氏らによるBeLieVeR-HIFi試験で示された。肺の最も増悪した病変部位を切除する肺容量減少手術(LVRS)は、肺気腫患者の肺機能や運動能、生存期間を改善するが、重大な合併症や約5%という早期死亡率が報告されている。BLVRは、最も肺気腫が進行した部位へ向かう気道に、気管支鏡で一方向弁を留置することで、病変のある肺葉を虚脱させる方法である。Lancet誌オンライン版2015年6月23日号掲載の報告。

弁留置を偽対照を用いた無作為化試験で評価
 BeLieVeR-HIFi試験は、COPD患者に対する気管支内弁(商品名:Zephyr valve)を用いたBLVRの有用性を評価する二重盲検偽対照無作為化試験(英国医学研究審議会[MRC]の助成による)。

 対象は、胸部CTで肺葉間裂に損傷のない異質性肺気腫がみられ、病態が安定したCOPDの外来患者であった。適格要件は、予測1秒量(FEV 1)<50%、肺過膨張(総肺気量>100%、残気量>150%)、運動耐容能低下(6分間歩行距離<450m)、重度の息切れ(MRC息切れスコア≧3)であった。

 被験者は、BLVRを施行する群または偽の弁を用いた気管支鏡を施行する群(対照群)に無作為に割り付けられた。

 患者およびアウトカムの評価を行う研究者には、治療割り付け情報がマスクされた。主要エンドポイントは3ヵ月時のFEV1の変化率とし、intention-to-treat(ITT)解析を行った。

FEV1中央値の上昇:8.77 vs.2.88%
 2012年3月1日~2013年9月30日の間に、50例のCOPD患者が登録され、BLVR群と対照群に25例ずつが割り付けられた。平均年齢はBLVR群が62.3歳、対照群は63.3歳、男性がそれぞれ68%、56%であった。

 ベースラインの予測FEV1はBLVR群が31.6%、対照群は31.8%、MRC息切れスコアは両群とも4点で、6分間歩行距離は342m、334mであった。一方、総肺気量はそれぞれ132%、143%、残気量は219%、245%であり、対照群で高値を示した。全体の留置弁の数の中央値は3個だった。

 FEV1中央値は、ベースラインから3ヵ月時までに、BLVR群が8.77%(四分位範囲:2.27~35.85)上昇し、対照群の2.88%(0~8.51)の上昇に比べ、有意に改善した(Mann-Whitney検定:p=0.0326)。

 また、BLVR群では、6分間歩行距離の延長分中央値が対照群よりも有意に改善した(25 vs.3m、p=0.0119)。

 BLVR群の2例(弁の除去に伴う呼吸不全、肺性心を伴うCOPD)が90日以内に死亡し、対照群の1例は気胸の遷延化のためフォローアップを受けることができなかった。

 著者は、「BLVRにより肺機能と運動能が有意に改善した。重大な合併症のリスクがあるため、BLVRとLVRSを比較する試験を行う必要がある」としている。

(菅野守:医学ライター)

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コメンテーター : 倉原 優( くらはら ゆう ) 氏

近畿中央呼吸器センター

2006年滋賀医大卒業。洛和会音羽病院を経て08年から現職。
自身のブログ「呼吸器内科医」では医学論文の和訳や医療エッセーを執筆。