中国で開発中の経口組換え型H.pyloriワクチンについて、未感染小児に対する有効性、安全性、免疫原性が確認されたことを、中国食品医薬品検定研究所のMing Zeng氏らが4,464例を対象とした第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。投与後1年時点の有効性は71.8%であったという。著者は、「本ワクチンはH.pylori感染の発生を大幅に減少することができた。さらなる長期追跡によりその予防効果を確認する必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年6月30日号掲載の報告より。
H.pylori未感染の6~15歳4,464例を対象に無作為化二重盲検プラセボ対照試験
試験は、江蘇省カン楡区の1施設で行われ、
H.pylori感染の既往歴または現病歴がない6~15歳の健康児を対象とした。コンピュータ無作為化にて1対1の割合で、
H.pyloriワクチンを受ける群またはプラセボを受ける群に割り付けた。本ワクチン投与は3回(0、14日、28日)で計画された。
主要有効性エンドポイントは、ワクチン投与後1年以内の
H.pylori感染の発生とした。被験児およびその保護者、また研究者に治療割り付けに関する情報はマスキングされ、解析は、事前プロトコル集団について行われた。
2004年12月2日~2005年3月19日の間に、被験者4,464例がワクチン群(2,232例)またはプラセボ群(2,232例)に無作為に割り付けられた。そのうち4,403例(99%)が、3回服用のワクチン投与予定を完了し事前プロトコルの有効性解析に組み込まれた。
副反応、有害事象は両群で同等、免疫原性はワクチン群で有意に高値
結果、ワクチン投与後1年以内の
H.pylori感染の記録は64例であり(ワクチン群2,074.3リスク人年当たり14例 vs.プラセボ群2,089.6リスク人年当たり50例)、ワクチンの有効性は71.8%(95%信頼区間[CI]:48.2~85.6)であった。
ワクチン群157例(7%)、プラセボ群161例(7%)で、1件以上の副反応の報告があった。重大有害事象は、ワクチン群5例(<1%)、プラセボ群7例(<1%)で報告されたが、いずれもワクチン投与とは無関係であると思われた。
本試験のフォローアップは3年時点まで延長され、2年目に
H.pylori感染はさらに32例(ワクチン群10例 vs.プラセボ群22例)が、3年目は19例(6例 vs.13例)が記録された。これらのデータに基づくワクチンの有効性は、2年時点で55.0%(95%CI:0.9~81.0)、3年時点で55.8%(同:-24.7~86.2)であった。
H.pylori感染の発生率は、プラセボ群は3年間で100人年当たり2.4から1.4へと変動がみられたが、ワクチン群はほぼ0.7で一定していた。
免疫原性についてみた、特定の抗ウレアーゼBサブユニットの血清IgGと唾液中IgAの幾何平均抗体価(GMT)は、ベースラインでは両群で同等だったが、投与(3回完了)後は3年時点までワクチン群が一貫して有意に高値であった(3年時点の血清IgG GMTはワクチン群が4.1倍高く、唾液中IgA GMTは1.6倍高いなど)。