心不全やその他急性の併存疾患で入院した高齢者に対し、1次予防として植込み型除細動器(ICD)移植を行っても、長期の全死因死亡や心臓突然死のリスク低減にはつながらないことが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院/ハーバード・メディカル・スクールのChih-Ying Chen氏らが、2万例超の高齢者について、後ろ向きコホート試験を行った結果、明らかにされた。BMJ誌オンライン版2015年7月14日号掲載の報告。
メディケア・メディケイドやACCレジストリなどのデータを分析
研究グループは、2004~2009年の米国公的医療保険メディケア・メディケイドの運営主体「CMS」の請求データや、米国心臓病学会(ACC)の全米心血管データレジストリ(NCDR)などを基に、心不全やその他急性併存疾患で入院し、1次予防ICD移植の適応である66歳以上高齢者2万3,111例について、後ろ向きコホート試験を行った。
1次予防ICDの有効性について分析し、主要評価項目は、全死因死亡と心臓突然死とした。
補正後の全死因死亡、心臓突然死リスクともに両群で同等
結果、3年補正前死亡率は、入院中にICD移植を受けなかった人が60%に対し、ICD移植を受けた人は40%と低率だった。しかし、高次元傾向スコアで調整後は、移植後180日の全死因死亡リスク、心臓突然死リスクともにICD移植によるリスク低下は認められなかった(それぞれ、補正後ハザード比:0.91、同:0.82~1.00、同ハザード比:0.95、同:0.78~1.17)。この傾向は、移植後365日についても同様だった。
なお、ICD移植により総死亡や心臓突然死リスクを低減する可能性があるグループとして、心筋梗塞を40日以上前に発症した人や、左脚ブロック、血中B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)低濃度が認められる人にそうした傾向がみられたものの、いずれも有意差には至らなかった。
著者は結果を踏まえて、「今回の結果は、高齢者においてどのようなグループが、ICD移植のメリットを得られるのか、さらなる検討を行うべき根拠を示すものであった」と述べている。また、「それら非代償性心不全や非心臓性併存疾患のリスク因子がある患者の認識が、より良好なICD施術に結び付き、デバイスが最大の有益性をもたらし、有意義な生存延長をもたらすことになるだろう」とまとめている。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)