多枝病変のあるST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者においてプライマリPCI後、血流予備量比(FFR)を測定評価して行う完全血行再建術が、さらなる侵襲的介入を行わない群と比較して、将来的なイベントリスクを有意に抑制することが示された。3つのエンドポイント(全死因死亡、非致死的再梗塞、再度の血行再建術)を複合評価して示された結果で、このうち完全血行再建術群の優越性は再度の血行再建術が有意に減少したことによるものであった。全死因死亡、非致死的再梗塞については同等であった。デンマーク・コペンハーゲン大学のThomas Engstrom氏らが、非盲検無作為化対照試験DANAMI-3―PRIMULTIの結果、報告した。Lancet誌オンライン版2015年8月4日号掲載の報告。
複合エンドポイントで評価
STEMIを呈した多枝冠動脈疾患患者は、一枝疾患患者と比較して予後が不良である。研究グループは、多枝病変患者のSTEMI治療について、FFRガイド下完全血行再建術 vs.梗塞関連動脈のみ治療の、臨床的アウトカムを比較するDANAMI-3―PRIMULTI試験を行った。
試験はデンマークの大学病院2施設で行われ、梗塞関連動脈病変に加えて1つ以上の臨床的に明らかな冠狭窄があるSTEMIを呈した患者を対象とした。
梗塞関連動脈のPCIに成功した患者を、さらなる侵襲的介入を行わない群または退院前にFFRガイド下完全血行再建術を行う群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化はWebシステムを介して電子的に行われ、プライマリPCIの担当医は以降の治療や評価に関与することはなかった。
被験者への入院および追跡期間中の治療はガイドラインに即して行われ、全員が最適な薬物療法を受けた。
主要エンドポイントは、全死因死亡、非致死的再梗塞、非梗塞関連動脈での虚血による血行再建術の複合であった。評価は、最後の患者が登録後1年間追跡を受けた時点で行われた。
全死因死亡と非致死的再梗塞は同程度だが、再度の血行再建術が69%抑制
2011年3月~2014年2月に627例の患者が試験に登録され、313例がプライマリPCI後非侵襲的介入群に、314例がFFRガイド下完全血行再建術群に割り付けられた。完全血行再建術群の314例のうち、非梗塞関連動脈のFFRが0.80超で、さらなる侵襲的介入を受けなかったのは97例(31%)であった。
追跡期間中央値は、27ヵ月(範囲:12~44ヵ月)。主要複合エンドポイントの発生は、梗塞関連動脈PCIのみ群が68例(22%)に対して、完全血行再建術群は40例(13%)であった(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.38~0.83、p=0.004)。
エンドポイントを個別にみると、全死因死亡HRは1.40(95%CI:0.63~3.00、p=0.43)、非致死的再梗塞HRは0.94(同:0.47~1.90、p=0.87)、非梗塞関連部位の再血行再建術HRは0.31(同:0.18~0.53、p<0.0001)で、完全血行再建術群の優越性は、再度の血行再建術の必要性が69%抑制されたことが寄与した結果であった。
著者は、「患者は完全血行再建術により、入院期間中の再度の血行再建術が回避でき、安全に全病変の治療を受けることができた」と述べ、「さらなる試験を行い、完全血行再建術は早期にまたは後期に行うべきか、またハードエンドポイントへの効果はあるのかについて明らかにする必要がある」とまとめている。