肺動脈肺高血圧症(PAH)に対する初期治療として、アンブリセンタン(商品名:ヴォリブリス)+タダラフィル(同:アドシルカ)の併用療法は、それぞれの単独療法と比較して、臨床的に失敗のイベントリスクが有意に低いことが示された。イタリア・ボローニャ大学のN. Galie氏らAMBITION研究グループが報告した。PAHに対する併用療法の有効性については、アドオン療法としての評価はされていたが、初期治療の長期転帰については検討されていなかった。NEJM誌2015年8月27日号掲載の報告より。
治療歴のないPAH患者を対象に二重盲検無作為化試験
AMBITION試験は、2010年10月18日~2014年7月31日に、14ヵ国120施設で被験者を登録して行われた。イベント主導型二重盲検法にて、WHO機能分類II度またはIII度の治療歴のないPAH患者を対象とし、被験者を、併用療法(アンブリセンタン10mg+タダラフィル40mg)、アンブリセンタン単独(アンブリセンタン10mg+プラセボ)、タダラフィル単独(タダラフィル40mg+プラセボ)のいずれかの初期治療を受ける群に、無作為に2対1対1の割合で割り付けて追跡評価した。いずれも1日1回投与した。
主要エンドポイントは、時間イベント分析で評価した、臨床的な失敗の初回イベント発生で、死亡、PAH悪化による入院、病勢進行、長期的臨床反応が不十分のいずれかの初回発生と定義した。
併用群の主要複合エンドポイント発生ハザード比0.50
610例が無作為化を受け、主要解析には500例(併用群253例、アンブリセンタン単独群126例、タダラフィル単独群121例)が組み込まれた。
主要エンドポイントの発生は、併用群18%、アンブリセンタン単独群34%、タダラフィル単独群28%であった。単独群複合では31%で、併用群vs. プール単独群の主要エンドポイントに関するハザード比は、0.50(95%信頼区間[CI]:0.35~0.72、p<0.001)であった。
また、ベースラインから24週時点のNT-proBNP値の変化について、併用群の低下が単独群よりも有意に大きかった(平均変化:-67.2% vs.-50.4%、p<0.001)。同様に、十分な臨床的反応を呈した患者の割合も有意に高値であり(39% vs.29%、オッズ比:1.56、95%CI:1.05~2.32、p=0.03)、6分間歩行距離の改善もより大きかった(ベースラインからの変化中央値:48.98m vs.23.80m、p<0.001)。
有害事象の発生頻度は、併用群がいずれの単独群よりも高かった。発生事象は、末梢性浮腫、頭痛、鼻閉、貧血などであった。