心房細動(AF)患者の脳卒中リスク層別化に有用なCHA2DS2-VAScスコアが、AFの有無を問わない心不全(HF)患者にも有用であることが明らかにされた。デンマーク・オールボー大学のLine Melgaard氏らによる検討の結果、同患者でスコアと虚血性脳卒中、血栓塞栓症、死亡のリスクとの関連がみられたという。また、非AF患者のほうがAFを有する患者と比べて、同スコアが高いほど血栓塞栓症の合併絶対リスクが高いことも認められた。一方で、予測精度は中程度であり、HF患者におけるスコアの臨床的な有用性は確定的なものではないと著者は述べている。JAMA誌2015年8月30日号掲載の報告より。
AF有無を問わない4万2,987例のHF患者を対象に検証
CHA
2DS
2-VAScスコアの判定は、うっ血性心不全(1点)、高血圧(1点)、75歳以上(2点)、糖尿病(1点)、脳卒中/TIA/血栓塞栓症(2点)、血管系疾患(心筋梗塞既往、PAD、大動脈プラーク:1点)、65~74歳(1点)、性別(女性:1点)で行う。
研究グループは、このCHA
2DS
2-VAScスコア判定を用いて、AFを問わないHF患者集団の虚血性脳卒中、血栓塞栓症、死亡を予測可能か調べた。
検討には、デンマークレジストリより全国前向きコホート試験のデータを用いた。被験者は、2000~12年にHF発症の診断を受け抗凝固薬治療を受けていなかった4万2,987例(うちAFを有した患者が21.9%)であった。最終フォローアップは、2012年12月31日だった。
被験者について、ベースラインのAF有無で分けたうえでCHA
2DS
2-VAScスコア判定を行い(最高9点とし、高スコアほど高リスクと判定)、死亡リスクの比較を考慮した分析を行った。主要評価項目は、HF診断後1年以内の虚血性脳卒中、血栓塞栓症、死亡であった。
4点以上では、AF有無を問わず血栓塞栓症リスクが高い
非AF患者において、HF診断後1年以内の各指標疾患の発生は、虚血性脳卒中3.1%(977例)、血栓塞栓症9.9%(3,187例)、死亡21.8%(6,956例)であった。
いずれも高スコア群ほどリスクは高く、スコア別(1点~6点)にみたそれぞれの発生率は、虚血性脳卒中はAF患者群で4.5%、3.7%、3.2%、4.3%、5.6%、8.4%、非AF患者群で1.5%、1.5%、2.0%、3.0%、3.7%、7%。全死因死亡はAF患者群で19.8%、19.5%、26.1%、35.1%、37.7%、45.5%、非AF患者群で7.6%、8.3%、17.8%、25.6%、27.9%、35.0%であった。
CHA
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2-VASc高スコア(4点以上)群では、血栓塞栓症の絶対リスクが、AFの有無にかかわらず高値であった(AFあり9.7% vs.AFなし8.2%、相互作用に関するあらゆるp<0.001)。
C統計値と陰性適中率は、CHA
2DS
2-VAScスコアの実行性が今回のAFありなしHF集団では中程度であることを示すものであった。虚血性脳卒中の1年C統計値は、AFあり0.67(95%信頼区間[CI]:0.65~0.68)、AFなし0.64(同:0.61~0.67)、1年陰性適中率それぞれ92%(95%CI:91~93%)、91%(同:88~95%)であった。