妊娠高血圧腎症と新生児の先天性心疾患との関連について検証した結果、非重症の心疾患と顕著に関連していること、重症心疾患との関連は妊娠34週以前発症の場合にみられることなどが明らかにされた。カナダ・モントリオール大学のNathalie Auger氏らが、1989~2012年にケベック州の病院で誕生した新生児194万例超を対象とした住民ベースコホート研究の結果、報告した。妊娠高血圧腎症を呈した母親から生まれた新生児の先天性心疾患リスクは十分に解明されていない。今回の結果を踏まえて著者は、「先天性心疾患の絶対リスクは低かった」とまとめている。JAMA誌2015年10月20日号掲載の報告。
有病率を、妊娠高血圧腎症曝露群と非曝露群で比較
検討は、1989~2012年のケベック州全住民を対象に行われた。同対象は、カナダの人口の4分の1を占める。分析には、心疾患の有無を問わず同期間にケベック州の病院で新生児を出産した全女性を包含、対象児は194万2,072例であった。
新生児誕生時の重症または非重症の先天性心疾患の有病率を、妊娠高血圧腎症曝露(妊娠34週未満または以後に発症)群と非曝露群で比較し評価した。
全有病率比は1.57、重症例の有病率比は1.25、非重症例は1.56
先天性心疾患の絶対有病率は、妊娠高血圧腎症曝露新生児のほうが、非曝露新生児よりも高率であった。全有病率は、前者が16.7/1,000例、後者は8.6/1,000例で、有病率比は1.57(95%信頼区間[CI]:1.48~1.67)、有病率差(新生児10万例当たり)は577.1例(95%CI:483.0~671.1)であった。
重症先天性心疾患の有病率は、曝露群123.7/10万例、非曝露群75.6/10万例で、有病率比は1.25(95%CI:1.00~1.57)、有病率差は23.6例(同:-1.0~48.2)で、曝露群の増大は認められなかった。
一方、非重症の先天性心疾患有病率は、曝露群1,538.8/10万例、非曝露群789.2/10万例で、有病率比は1.56(95%CI:1.47~1.67)、有病率差は521.1例(同:431.1~611.0)で、曝露群の増大がみられた。
特異的疾患別にみた場合、有病率が最も高かったのは中隔欠損症で、曝露群の同有病率は1,090.9/10万例であった。
発症時期で比較した場合、後期(34週以後)発症と比べて早期(34週未満)発症群では、重症先天性心疾患の有病率比は2.78(95%CI:1.71~4.50)、有病率差は249.6例(同:89.7~409.6)であったが、非重症先天性心疾患については、有病率比5.55(同:4.98~6.19)、有病率差6,089.2例(同:5,350.0~6,828.3)であった。
(医療ライター:武藤まき)